第4話 過去と未来が共存する世界
どこか懐かしい町並みと遠くにまばらに並ぶ高層ビル、その先に見える山々。
見たことがない光景のはずだが、見たことがあるようにも思える。
そう思いながらしばらく見ているとふと、気になって眼下へと目をやる。
病院の敷地内の駐車場に妹が現れ、端にある駐輪場を歩いていくとそこに置いてあった自転車に乗る。
ヘルメットを被ってサドルにまたがると結衣はこちらに気づいたか、手を振ってくる。
窓越しに春人が手を振り返すと彼女は自転車をこいで敷地から去っていく。
結衣が乗る自転車は歩道と車道の合間にある自転車専用道を走って去っていく。そしてその近く、高く張られたガードレールで遮られた道路の上を車が飛び去っていく。
春人がそれを何気なく見ていると大型の箱形の車が道路すれすれを飛んで病院の敷地に入ってくる。
それは病院の建物近くの停留所と思われる所の上に止まるとゆっくりと着陸し、乗降口を開ける。そこで何人かの乗客を昇降させると再び浮き上がり、飛び去っていく。
春人はその光景に既視感を覚える。
どうやらあれがこの世界の路線バスのようである。
他にも敷地内の駐車場に止まり、あるいは浮かび、飛び去るいくつかの車。
合間を行き来する人々。
彼はそれをずっと眺めていた。
触れる立体映像が映されるスマホ、そして車が当たり前のように空を飛ぶ。
そして何気なくつけたテレビに映し出される映像や壁に掛けられているカレンダーには当たり前のように日本語が映され、また書かれている。
しかも、
「昭和…100年か」
カレンダーに印刷された文字を春人は口に出し、記憶をたどる。
確か、令和の前の年号であった平成のさらに前の年号だったはず。
平成末期生まれの春人にとってはもはや遠い過去のはずの年号、しかしここでは今も使われている、
目が覚めたら突然数十年先の未来に来てしまったかのような非現実な世界。
だが、窓の先に見える光景は確かに未来と言うよりは過去、テレビで見たかつて昭和と呼ばれた時代を思わせる雰囲気。
過去と未来が同時に存在するかのような光景に春人は戸惑う。




