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偽りの悪旗外伝 もう一つの地球『イザナミ』への転生編   作者: 新景正虎


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第27話 第六惑星へ

割り当てられた兵員用の大部屋に三人はいた。


「第六惑星は木星とか土星とかみたいなガス惑星だ」


 各衛星にはそれぞれ軍事拠点があり、艦隊が駐留しているのだと言う。


 ただ、第六惑星から放出される磁気や放射線の影響が強く、その影響の少ない外縁部の衛星に拠点を築いている。


 春人らが向かうのはその中の一つ。そこは第六惑星を回る衛星のなかで最大の衛星であり、ゼフィル共和国のアマテラス星域防衛艦隊の司令部があるのだという。


 船は第四惑星の地表を離れ、ゼフィルの軍事拠点がある第四惑星の周囲を回る衛星のひとつに向かう。


 そこは定期船の航路から大きく離れた宙域。


 そこの裏には巨大な構造物が浮かんでいた。


 それは、海亀を真上からみたような見た目の、甲羅の部分が巨大な輪のように見える思わせる人工物。


「あれは」


「聞いたことはあるだろう、あれが『門』だ」


 輸送船の窓の外から見た巨大構造物に驚く春人に土方が答える。


「あれが?」


 土方の言葉に振り返る春人。


 門、それは恒星間移動の起点と終点となる巨大構造物。


 護衛艦隊の整備機能を持ち、自力での恒星間航行も可能な巨大宇宙船で、あれを使えば自力で恒星間移動できない船でも恒星間航行ができる。


「あれがなぜここにあるかわかるか、時任」


 土方が小声で春人に聞いてくる。


「それは」


 思わず春人は辺りを見渡す。


 辺りには誰もいない。


 そのさまを見た土方はにやりとして、小声で春人に語りかける。


「やつらはまだあれを俺たちに使わせるつもりはないんだ。ここに閉じ込めておきたいのさ」


 そうかもしれない。あれを使うことができればゼフィルの他の星系や他の国にも行ける。


しかし、


「まあ、かごの鳥も悪くないがな。どうせ、今の俺たちはゼフィルの庇護の外に放り出されたって自力で生きていけないんだからな」


 土方の言葉に春人はうなずくしかない。


 ゼフィル一国でさえ春人が知る地球より遥かに規模が大きいのに、これよりも規模の巨大な国がこの銀河には存在する。


 それに比べてアマテラスの力はあまりにも小さい。日本の地方都市がアメリカと渡り合うようなものであろう。


「…前世日本とは逆ですね」


 春人の言葉に土方はにやりと笑う。


「ああ、残念だがこのゼフィルに守ってもらわないと生きていけない。いまいましいがそれがこのアマテラスの現実さ」


 春人らを乗せた輸送船は門の中に入る。


 輸送船が門内部の空間を航行しているあいだ、春人らには奇妙な感覚が続いた。


 まるで車に酔ってしまったかのような不快感に春人は悩まされる。


 しかし、やがてそれも和らぐと、春人は時計を見る。


 標準時を示す時計はすでに昼過ぎを示していた。


 空腹を実感した春人はよろよろとベッドから身を起こし、士官食堂に向かう。


「よう、お前もか」


 春人は食堂で土方に会う。


 彼はテーブルに突っ伏し、苦しげな表情であった。


「土方さん」


 春人も彼と同じテーブルにつく。


「聞いていたが…慣れないときついな。超空間酔いは」


 どうやら彼もこれは未経験らしい。


 ここは通常空間とは違うために感覚が異常となる。それに適応できないと苦しむことになるのだという。


 事前にそう説明されていたが、いざ実際にその身に起きないと実感がなかった。


 春人は頭を押さえながらうなずく。


 春人らだけではなく視察の参加者はその多くがうめいているが、輸送船の乗組員である兵士たちは何事もなく仕事をこなしている。


 傍らにはこちらを見るとこちらに同情的な顔を見せるゼフィル軍の士官らが見える。


「あいつらは平然としてやがる。畜生め」


 春人らは簡単な食事でその場は済ませ、体調が回復するまでおとなしくしていた。


 しばらくすると、やがて船は『門』を抜ける。


 ようやく体調が回復した春人が窓の外を見ると外は再び漆黒の宇宙と先程とは別の天体の地表の光景が広がっていた。


 星系の主たる太陽(アマテラス)は星々の間にまぎれて区別がつかなくなり、窓の外は無数の光点しか見えない。


 しかし、そんな闇の世界に一際輝く物体が彼方に見える。


「あれが第六惑星か」


 春人は予習の内容を思いだす。


 第六惑星は第三惑星の数十倍の質量を持つガス惑星。その周囲を無数の衛星が周回している。


 春人らが向かうのはその外縁部を回る衛星の一つ。


 周回軌道を回る間、春人は窓の外から衛星を見る。


 上空からは岩しか見えない。


 だが、衛星に降下した輸送船は狭くて船がぎりぎり通れる幅の渓谷の合間を下り、最奥にある軍港に着陸する。


「地下渓谷やクレーターを利用した天然の要塞か」


 辺りを見渡して土方がうめく。


 衛星の地下を掘り抜いて築かれた地下の軍港。


 そこには気密区画があり、軽重力だが、機密服なしで生活ができる。


 1Gの人口重力区画もあり、窮屈ではあるが生活には支障はなさそうである。


 彼らはイーテニス大尉に案内されて基地の施設を見学し、港に並ぶ軍艦や訓練のようすなどを見学する。


 しばらくして春人は気づく。ここにいるのは自分達以外は兵士や士官に至るまでマアナ・ロハスの異形の姿の軍人ばかりである事に。


「そう、ここにいるのはゼフィルの軍隊だけ、俺達にはまだ自衛隊みたいな自前の軍事力すらないのさ」


 土方の言葉に春人はうなずく。


「でも、ここにいるのは正規軍じゃないんですよね?」


「ああ。ここにいるのは恒星系アマテラスの治安維持を行う警備隊と太陽系(テラ)の監視を行う異星文明調査局の艦隊が主だ。要は海上保安庁みたいなもんだろう」

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