第1話 日常に踏み込む破滅の足音
深夜、突然スマホから鳴り響く警報音に彼は飛び起きた。
スマホの画面に映る緊急速報メールに彼は心臓が掴まれる。
ついに来るべき日が訪れてしまった。
彼は寝床に用意してあった非常袋を手に、着の身着のまま自室を飛び出すと、階段をかけ降りる。
一階のリビングにはスマホの明かりで互いを照らしあう家族が集まっていた。
「陽翔!」
「父さん!」
「行けるところまで車で逃げるぞ」
父の言葉に彼らはうなずき、車に乗り込むと自宅を後にする。
夜中の住宅街を貫く道路はまだ空いていた。
夜中にも関わらず家々の明かりは次々と点り始めている。
ほどなくこの道も避難のための車でごったがえすだろう。
「くそっ、完全に裏をかかれた!まさかやつらがこちらを先に攻撃するなんて!政府は何をしていたんだ!」
車を運転しながら悪態をつく父親。
父親の運転する車内で時透陽翔は自問自答していた。
車の窓から外を見る。
その一角が赤く輝いている。
なぜこうなってしまったのか。
なぜ、住み慣れた家を捨てて逃げ出さなければならないのか。
ふと気づくと手に持っていた、さっきまでひっきりなしに緊急速報メールの通知を伝えていたスマホの震えが止んでいた。
見ると町中なのに圏外の表示。
携帯の電波が遮断された?
「あっ!」
突然車が急停車し、陽翔の体はシートベルトで押さえつけられる。
陽翔が顔をあげるとヘッドライトに照らされた前方の光景が目に入る。
目の前の車道はいつの間にか車で溢れ返っていた。
飛び交う怒号、クラクションの騒音。
あっけにとられているうちに背後から明かりで照らされる。
窓から後ろを見ると今来た道にも何台もの車が止まり、身動きがとれなくなっていた。
「車を捨てて逃げるぞ!」
父親の言葉に陽翔はうなずき、車を降り、手荷物だけをもって歩道を走り出す。
深夜の町中に響きわたる警報と共にビルの谷間の先、漆黒の空の片隅が赤く染まり始める。
その時、闇色の空で何かが光った、次の瞬間!
頭上で爆発が起きる!
陽翔は衝撃に引き飛ばされそうになるが、よろめきながらもなんとか耐える。
だが、そこに……
「逃げろ!」
誰かが叫ぶ。
辺りから悲鳴が沸き起こる。
ふと、予感がして陽翔は足を止めて頭上を見上げる。
闇色の空から煙と共に大量の破片が降り注いでくる。
彼はそれを呆然と見上げていた。
逃げなければならない。
…だが、足が…動かない!
「はると!」
誰かが自分を呼ぶ悲痛な叫びが聞こえた次の瞬間、爆発と衝撃が彼の意識を押し潰し、その意識は光の中へと消えていく、
てん…はずだった。
だが、意識が飛んだはずの彼が次に見たのは、真っ白な天井だった。




