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バッドエンド・リバイバルズ  作者: ストラド
第一章 語り手の章

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12/56

第0話 観測資料

――ピピッ

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タイトル:『魔王は老衰で死にたい』

作者:セイギ・アウクト


 本作は勇者に討伐されず老衰で死にたいと願う魔王と、勇者を倒すことしか頭にない脳筋勇者の攻防を描いたギャグマンガのはずだった。


 魔王ヴェスティは、かつて魔王を研究する学者であった。研究の結果として分かったのは、魔王を倒した勇者が、凱旋パレードの後ほどなくして行方をくらまし、それと同時に次期魔王が誕生してしまうということ。そのことから、彼は魔王を倒した勇者が次の魔王になるのではないかと仮説を立てた。


 ある日、デグルという男が勇者に選ばれた。デグルは引きこもりがちなヴェスティの唯一の親友だった。ヴェスティは彼を引き留めようとしたが、勇者は教会でその座を手にするときに洗脳を受けさせられ、異常なほどまでに魔王を倒したいと思うようになる。案の上彼を止めることが出来なかった。


 やがてデグルは魔王を討伐し、都へ戻ってきた。凱旋パレードが終わった後、彼はヴェスティの家へ訪ねてくる。彼は精神をほとんど闇に飲まれ、なんとか理性を保っている状況だった。そしてヴェスティに自分を殺せとせがんだ。しかし、ヴェスティは親友を手にかけることができなかった。


 そうこうしているうちに、デグルは家へ押し寄せてきた魔物によって連れ去られていった。冷静になったヴェスティは、今が魔王をこの世から消すチャンスなのだと気づく。上手くいく保障はない。でもヴェスティには何故か自信があった。だが、そのためには自らの手で親友の命を奪う必要があった。


 これまでの研究成果のおかげで戦わずして魔王の玉座に辿り着くことが出来たヴェスティ。ヴェスティと目が合ったデグルは彼を守ろうとする魔物を下げさせ、武器を床に置き、殺せとばかりに両腕を広げ、苦しそうな笑顔を見せた。


 ヴェスティは涙を流しながら心臓を一突きし、親友を送った。魔王を殺したヴェスティは、魔王の権能を手に入れた。玉座の周りに群がる魔物どもにひと睨みすれば、灰になって消えた。


 シリアスシーンはここでおしまい。これ以降、精神を闇に飲まれることなく魔王になることが出来たヴェスティは、老衰で死ぬべく、勇者に殺されないために様々な罠を仕掛けることにする。もちろん、ヴェスティは人の心を持っているので、死んだり大けがをしたりはしない罠である。そのシーンがコミカルに描かれるのだ。


 ヴェスティは過去の勇者パーティーの取材で、魔王は膨大ながらも有限の生命力を持っており、それが尽きれば死ぬことが分かっていた。生命力を犠牲にし、数々の罠を用意するヴェスティ。


 飽きない罠の描写に、読者は釘付けになった。


 しかし、現実世界で編集者に物語の内容を強制されたとある漫画家が自殺をしたことで、物語の流れは一変する。その漫画家のために、多くの漫画家や作家などが出版社に立てこもり、表現の自由を訴える表現闘争が発生。本作の作者であるアウクト氏も立てこもった人物の一人だ。


 そして、自らが望まない展開にされた行為を追体験させようと、本作にだれも望まないエンディングを与えた。


 どれだけ頑張っても、やはり魔王の生命力は膨大だ。ヴェスティは誰も自身のせいで死なないようにしているのだから、尚更生命力が減るスピードは遅かった。勇者はどんどん代替わりをしていき、技術も進歩していく。スピードが遅いとはいえ、ヴェスティは徐々に摩耗していく。結果、老衰で死ぬという願いがかなうことはなく、魔王を倒した人物が魔王になってしまうという連鎖を断ち切ることはできなかった。


 アウクト氏は、このエンディングを撤回しなかったし、これ以降筆を握らなくなった。そして、若くして病気で命を落とした。彼は本来のエンディングをどうするつもりだったのか、何も遺さずにこの世を去った。今後も、誰も知ることはできないだろう。

――ピピッ

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