第10話 心で響き鳴るブザー音
――ピピッ
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「ありがとうございます。私達は、珍しい二人一組の『相棒』です。ですので、私のこともヴェルスのことも、同じように扱って欲しいんです」
なんとなく状況は掴めた。かつての契約者に、どちらかが無視されたり、嫌がらせを受けたりしたのだろう。どちらかというのは明白だ。先程の自己紹介からそれがヴェルスであると分かる。
「いや、実力に合わせて使ってくれ」
ヴェルスがそう口を挟んだ。
この発言から考えられる可能性は二つ。一つ目は、自身に実力があると思っている可能性。二つ目は、自身の実カに自信がないからこそ遠慮している可能性。だが、恐らく後者だ。彼の全身から低い自己肯定感のオーラが溢れ出ている。僕も彼の気持ちは良く分かる。
「僕の方で上手い具合に何とかやるよ。じゃあ僕からも条件が一つ。使う者・使われる者の関係じゃなくて、互いに助け合う、友人のように接して欲しいな」
それを聞いたリアスは安心したような笑みをフッと浮かべた。ヴェルスからは先程感じていた僕への不信感や敵意が薄くなったような気がする。その場しのぎの発言にならないよう、頑張っていかないと。
そうして僕はリアスとヴェルスとそれぞれ握手を交わし、彼らは僕の「相棒」となった。一応、研修期間中はお試しのような形になるようだが。
リアスとヴェルスを連れて図書館支部のオフィスに戻ってきた僕達。かつて遊園地支部に勤めていたこともあり、新人を名乗っていたエクシアとその「相棒」であるネクサスを除き、二人は他のメンバーと顔見知りのようだった。
ただ、どことない気まずさも感じる。僕がかつて感じ、拒んできた、同情の感情が漂っている。
「さ、そろそろ業務に取り掛かろうか。結構溜まってるからね」
この雰囲気を感じたからか、係長が空気を切り替えようと呼びかける。皆がばらばらと散っていき、アルタ姉さんは僕らの前にやってきた。
「あんた達は今から研修。さ、座って」
まずは、係長からも教わった天上世界のシステムについての復習。次に、各メンバーについて。メンバーは適性に応じた世界を担当することが多いらしい。僕はしばらく他のメンバーと共に観測することになるようだ。
「一旦授業はここでおしまい。『習うより慣れよ』って言葉があるでしょ?いい感じの依頼を見繕っておいたから、あんた達とミストと私の5人でさっそく観測をしにいくわよ」
そう言ってアルタ姉さんは僕に指輪を渡した。
「これは情報端末として使える指輪よ。指輪の飾りから空中に画面が浮かび上がるの。後の使い方は地上世界のスマートフォンみたいな感じね」
そう言ってアルタ姉さんは左手の甲を上にし3秒ほど強くこぶしを握るとやや見覚えのある画面が映し出された。
「天上世界で過ごすだけの人は気にしなくていいのですが、私達のような者は左手の薬指に着けることをおすすめします。面倒なことに巻き込まれなくなりますから」
「確かに。ありがとう」
リアスにそう助言され、僕は少し恥ずかしさを感じながらも左手の薬指に指輪を付けた。先程のアルタ姉さんと同じようにすれば、画面が映し出される。
「じゃあ観測先の資料を持ってくるから待っていて頂戴」
アルタ姉さんはそう言って去って行った。
僕達のはじめての観測は、一体どんな世界なんだろう。もう、今からドキドキしてしまっている自分がいた。
――ピピッ
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