○海辺の君/拾う者
ザザーン ザザーン
車を降りて聞こえてくる波の音
履き替えたサンダルの下砂つぶが来ている
ワクワクしながら影さす階段を上る
ザザーン ザザーン
聞こえる波の音、風に乗って来る香り、緑と青と白の色、波風が髪をなびき耳元で音を奏でる
人一人いない時と場所で思いっきり叫んでいた"今のわたしの気持ちを"
清々しさとドキドキを感じる
呼吸を整え階段を下りる
海辺に足を着いた ザクザク
砂浜とわたしの合唱が心地好い ザクザク ザクザク
海を見ながら風切り歩く
小波大波は押して引いてを繰り返し、砂浜と海は遊んでいる
あっと動く者 珍しいことに蟹と出会う
懸命に歩いている蟹
蟹の進路を辿り青空を見上げる
やはり立ち止まると一つ一つの生命の輝きが五感あるいは六感を通して常にわたしと交流しているのを思い出す
一行一行がそうだった
みんなが知っていることを知っている
光から目を閉じていた目を開けると、当たり前だったものがありがたいものとしてより鮮明に映る
砂浜はゆるく弧を描いていた 長いものだ
ザクザク ザクザク そしてついぞ脱ぎたかったサンダルを脱いだ
今までサンダルとわたしの足裏のすきまが煩わしくてしょうがなかった
とたんにくすぐったかった砂粒だったと思うのと同じくして砂浜を直で感じた
サンダルの終わりはだしの始まり
ほんの一瞬でやりとりされているものを感じ取る サクサクと歩く 長い砂浜を
見るものすべて楽しくてサンダルをブランコさせる
おっ!と認めて近寄り拾い上げる
貝殻
きれいなのはどこだとここから宝探しが始まる
あれもこれも嬉しいなぁ楽しいなぁ
漂流物・ガラス瓶・貝殻
貝殻を握りしめ、思っていた以上にこの大地は、この海は、この空は受け止めていた
わかりやすく単純で今まで好き勝手していた人の終わりが近づいている
手にしていた唯一の貝殻を捨てる
波打つ海にさらわれて、海を見て、空を見て、背を向ける
"わたしは何者か?"
背を打つ風を通して"わたしを問うわたし"はサンダルを履き足元のひとつを拾い上げて階段を上る
ザザーン ザザーン
去り行くわたしの背は気力に満ちていた
ザザーン ザザーン
すめらすめら
かわるかわる
うれしうれし
たのしたのし
ありがたいありがたい
愛する愛する
出会いに感謝出会いに感謝
今有一切大願成就
杉乃中かう 拝




