43:月からの提案(後半)
「私は夜人くんの味方なの。夜人くんが3人をお嫁さんにしたいというのなら私は反対しないわ」
「…………」
お母さんの言葉を思い返しながら私は改めて3人にそう告げる
悔しい…本当に悔しい…だけど、それが夜人くんの為だと考えれば私は耐えられる
お母さんが言っていた一番最悪な状態は、私が夜人くんに我儘を言った所為で見知らぬ女の人と自動的に結婚しないといけない事…
そうすると優しい夜人くんの事だから、見知らぬ女の人であっても大事にしようと考えるに決まっている
その結果で夜人くんが疲れて病気になったり、私とその女の人が喧嘩したりすると夜人くんの心が私から離れていってしまう事が有り得るそうだ
だから私は夜人くんが選んだ人なら悔しくて哀しいけれど…我慢できる筈だ
「その代わり、3人がもし夜人くんのお嫁さんになった時に条件があるわ」
「「「?!!!」」」
夜人くんが選んだ別お嫁さんなのだから良い人には違いない…そうは思うけれど、私と仲良く出来るのかは別だと思う
だからこそ私は今後、夜人くんのお嫁さん候補になる人には条件をつけるつもりだ
「1つ、もし私たちの間で言い合いがあっても夜人くんには言わない。お嫁さん達同士で話し合うわ」
「「「……」」」
3人とも言葉は発しないけれど黙って頷く
夜人くんに知られて呆れられたりしたら悲しいしね
「2つ、お嫁さん達でルールが出来たりすると思うの。その場合もお嫁さん全員で話し合うこと」
「「「……」」」
「3つ、お嫁さん全員でお話合いを1ヶ月に1回はしましょう。夜人くんの事とか、お嫁さんが困っている事とか…皆、夜人くんのお嫁さんだから助け合いは必要だと思うの」
「「「はい」」」
やっと3人から返事が聞こえてきた
どうやら私の言っている事に納得できているみたいね
「最後に……夜人くんと結婚する1番目のお嫁さんは私。これは絶対に譲れないわ」
「「………」」
「は、はぃぃ…」
雪ちゃんは返事をしてくれたけど、あづみちゃんと蓮華ちゃんだっけ?
2人は再度無言になる…
多分2人は良い所のお家の娘なんだと思う
だからお家的に1番目じゃないと駄目なのかもしれないけれど、渡したとしてもコレばっかりは譲れない
「あとは夜人くんと貴方たちがどうするかよ。今言った事さえ守ってもらえるのであれば私は貴女たちが夜人くんに近づくのに反対はしないわ」
「あ、じゃあ私も参加する~!!ヨルヨルのお嫁さんになる~!!!」
「ダメッ!!」
私たちの話を聞いていた棗さんが、背後から夜人くんのお嫁さんに立候補してくる
思わずその言葉に条件反射で反対をしてしまった
「え~何で~?私は月ちゃんの言った決まり事をちゃんと守るよ~?」
「棗ちゃんはこの間の私との約束事も守らなかったよね」
「あれれれ~?そんな記憶はアリマセンナ~?」
夜人くんが棗ちゃんのお家の道場に初めて通った日、棗ちゃんに道場裏に呼び出された
棗ちゃんは曰く、夜人くんに一目惚れをしたそうだ
私は棗ちゃんの真剣な表情と、何処か自分に似ている部分を感じ取って、彼女のアプローチを条件付きで許容したけれど…彼女はその条件をいとも容易く破ったのだ…




