3:あの悪夢を味わいたくないという声に導かれて
「はい夜人くん、何か意見有るかなぁ?」
「はい、今年の運動会は僕と零くんが別々の組になった方が良いと思います」
「っ?!!」
俺が意見した瞬間、クラスはざわっとした
そしてそれと同時に視界の端に「え、何言ってんの?」みたいな零の表情が写って地味にウケる
と言うか・・・解決策なんて実質これ一択しかないだろう
前回の運動会、園は俺と零に配慮した結果・・・園自体が荒れた
それは1:10のこの世界で男いる組と男いない組・・・明確に言うと当たりとハズレが出来てしまった事が原因だ
であればどっちも当たり、個人差で言うと零目的の子からすれば俺はハズレだろうが・・・まぁ許してやろうレベルまで落とし込めば園が荒れる事は無いのだ
未だザワザワしているクラスを尻目に先生に対して意見を続ける
会議は踊る、されど進まずなんて思いは前世だけでお腹一杯だ
「僕と零くんがみんなに内緒で組を決めます。他の子たちはくじ引きとかで紅組か白組かに分かれるのが1番良いと思います」
「よ、夜人くん・・・」
おぉ・・・先生が感激して涙目だよ
そりゃそうか・・・昨年1番大変だったのは間違いなく茎中先生だろうしな
先生の心労を考えれば涙目になっても仕方ない・・・本当にご苦労様です
因みに立候補制を提案しなかったのは俺自身への保険だ
園のアイドルである零にみんな行きたがって、俺の所に誰1人来てくれなかったとしたら・・・俺の心はポッキリと折れる自信しかないからな
「はい、夜人くんから凄く良い、素晴らしい案が出されました!!先生はもうコレで良いんじゃないかと思いますが、皆はどうですか?!!」
おぉ・・・先生、同調圧力を使ってきたよ
本当に大変だったんだね・・・
「お、俺様は反対だっ!!」
「えっ?!!」
「俺様は夜人と同じ組が良いっ!!力を合わせて勝ちたいんだ!!」
「・・・・・・」
零の反対に対して先生は絶望した表情を浮かべだした
あれ?俺、人の心なんて読めない筈なのに「またストレスで吐く日が・・・」という先生の心の声が聞こえる気がする
まぁ、今日の俺は先生の味方だ
そもそもこのクラスでも半数がハズレになる以上、クラスの空気も絶対ギスギスするだろう・・・
俺はそんなクラスに居たくないっ!!!
「零くん」
「な、なんだよ・・・」
「マッスル戦隊バンプジャーでも言っていただろ?競い合ってこそ最高の結果が付いてくるって」
「お、おぉぉぉぉ・・・」
「零くんと僕が戦って競い合う・・・それってもう・・・ライバルじゃないかな?」
「ラ、ライバル・・・」
「そう、ライバルだ。さぁ零、運動会で僕と勝負だっ!!」
「う、うおぉぉぉぉーーーーーーーーー!!やる!!俺様は夜人と勝負するっ!!」
ふっ、チョロイな・・・
5歳児なんてこんなもんよという俺の悪魔の声は置いておく
零が今夢中になっているマッスル戦隊バンプジャーの名言を引用して良かった
・・・まぁ俺は余り見てないけど、零が月曜日に興奮していつも解説してくるからな
策士策に溺れるとはこの事よ(※違う)
こうして単純な零の御蔭で、俺と零は別の組に振り分けられることになった




