第XX話 均衡のために
「失礼します。魔王様、準備が整いました。」
耳の長い褐色の女性が書類整理している男性の前に立ちそう言った。
「分かったでは行こうか。あと魔王って呼ぶのやめてくれないって言わなかったっけ?」
魔王と呼ばれた男性は掛けてあった黒いマントを羽織り、褐色女性を引き連れ部屋を出た。
「いえ、魔王様は魔族全てを統べるものになられました。では魔王様を魔王様とお呼びするのになんの躊躇がありましょう?あと、魔王様の事をあんなクズと同じように勇者なんて呼びたくないです。」
「あぁ、そう…」
「お許し頂けるのであれば代わりに旦那様とお呼びしますけど?」
「やめて、アイツがまた精霊魔法ぶっ放すから」
「冗談です。さすがにこんな重要案件のさなかに城が崩壊しかねない嫉妬爆弾を起爆させる気はありません」
「こんな時じゃなくてもやらないでほしいんだけど」
「善処いたします。」
しばらく赤い絨毯の敷かれた廊下を歩き続け一際大きな扉の前に着いた。
「『開けゴマ』」
男性が開錠の呪文を唱え扉を開けるとそこには多くの人ならざる者たちがいた。
「諸君!遂にこの時が来た!魔王が倒され数年、闇の世界へと追われた諸君たちを今再び光の世界へと呼び戻すことが出来る!」
彼の言葉に人ならざる者たちは大きな声を上げた
「では行こう!世界に均衡を!諸君たちに光のある街を!人の世に闇の時間を戻すために!!!」
再び大きな歓声が上がった。
「いざ聖王教会本部に。神の真意を知らぬ愚かな信者たちに神の御心を叩き込むために」
巨大な飛空船に乗り込みながら男は近くにいる部下にのみ聞こえる声で呟いた
「全ては神様の願いのために」
「穏やかなる世界のために」
耳の長い白い肌の女性と犬のような獣人が男性の言葉に続く様に呟いた
巨大な飛空船はそれより小さい飛空船群を伴いながら発進した。




