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白い木の右腕のユアン  作者: 月ノ宮マクラ


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014・本物の実力

 村を出てから、だいぶ歩いた。


 ゴブリンが目撃されたのは、村から5000~1万メーガンほどの距離にある街道なんだって。


 僕らはその場所までやって来て、


「ここから森に入ります」


 と、アイネが言った。


 3人の冒険者は、街道のそばにある森の木々を眺めて、それから「ふ~ん」と呟いた。


 獣人のリュシアさんが、


「森に入ったら、どこに向かうの?」


 と聞いてきた。


(……どこに向かうんだろう?)


 僕もわからない。


 僕はてっきり、冒険者の人たちが『この辺に行きたい』とか言って、そこまで案内するだけかと思っていたんだ。


 アイネを見る。


 彼女は地図を取り出して、


「ここです」


 はっきり言った。


 アイネの小さな指が示す地点を、みんなで覗き込む。


 結構、森の奥だ。


 アイネは言った。


「目撃されたゴブリンは、10体以上の群れだったそうです。それなら、もう巣が作られてる可能性が高いでしょう」


 ふむふむ。


「ゴブリンの巣は、天然の洞窟を利用して作られることが多いです。そして、この辺には、そうした洞窟のありそうな崖があるんです」


 ペチペチ


 アイネの指は、地図を叩く。


 アイザックさんは「ほう……」と感心したように呟く。


 シュレさんは無反応。


 リュシアさんは「なるほどね」と頷いて、


「でも、こうした地形の森なら、崖なんて他にもあるんじゃない? どうしてここを選んだの?」


 と質問を重ねた。


 何だか試すような感じ。


「川です」


 アイネは即座に答えた。


「ゴブリンだって生きているのなら、水場は必要でしょう? 地図にはないけど、ここには川が流れてて、崖と交差するような場所はここだけなんです」

「…………」

「もちろん絶対じゃない。でも、ここが一番可能性が高いと思うんです」


 アイネはそう言って、リュシアさんを見つめる。


 彼女は、その視線を受け止め、


「……うん、合格」


 と笑った。


(ほえ?)


 僕とアイネはキョトンとする。


 獣人のお姉さんは、チラッとアイザックさんの方を見て、


「そうだね。私もそう思う。少なくとも、付近でゴブリンの痕跡は見つけられるんじゃないかな」


 と言った。


 シュレさんも、彼を見ている。


 アイザックさんは仏頂面で「そうだな」と呟いた。


 リュシアさんは、


 ポンポン


 アイネの赤毛の髪を優しく叩いて、


「なかなか頼もしい『案内人』さんだね。この先もよろしく頼むよ?」


 と片目を閉じる。


 アイネはポカンとしてたけど、すぐにその意味がわかって表情を輝かせた。


「は、はい、がんばります!」


 元気なお返事。


(さすがアイネ)


 僕も、ちょっと嬉しくなっちゃった。


 それから僕らは、アイネの示した場所を目指して、森の中へと入っていったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 森の浅い場所はすぐに通り抜け、深い場所へとやって来た。


 空気が変わる。


 ここからは、いつ魔物に襲われてもおかしくない危険な場所だ。


 3人の冒険者もその変化を感じ取ったのか、ここまでの道中とは違って、表情が引き締まっていた。


「こっちです」


 アイネが方向の指示を出す。


 みんなでそっちに行こうとした時、


「待ってくれ」


 アイザックさんがその足を止めた。


(?)


 振り返った先で、アイザックさんは真剣な顔をして僕とアイネを見つめた。


「ユアンとアイネだったか? お前たちは、ここから絶対に先頭に立つな」

「え?」

「え?」


 僕らは驚いた。


 でも、彼の表情は変わらなくて、


「先頭は、俺とリュシアが歩く。最後尾はシュレに任せた。ユアンとアイネは、その間だ。もし戦闘になったら、シュレのそばでジッとしているんだ。いいな?」


 そう強い口調で言われた。


 アイネと顔を見合わせる。


 きっと子供の僕らを心配してくれてるんだろう。


(別に、僕も戦えるけど……)


 でも、そう言ってくれるなら、素直に従ってもいいかと思えた。


 だって、相手はプロだもん。


 魔物を相手にすることに関しては、僕らよりもずっと経験豊富で、だったら僕らは下手に動かない方がいいんだろうなと思った。


 視線でアイネとそんな会話をする。


「はい」

「わかりました」


 2人で頷いた。


 彼も満足そうに頷く。


 リュシアさんは苦笑し、シュレさんは無表情だったけど、2人ともそんな彼のことを気に入っているような雰囲気が感じられた。


「よし、じゃあ行くか」


 アイザックさんはそう言って、歩きだした。


 その大きな背中に、僕らはついていく。


 …………。


 時々、アイネが方向の指示を出しながら、僕らは森を進んだ。


 そして、


「……お?」


 その途中、アイザックさんが不意に足を止める。


 彼の見つめる先の草むらが揺れ、そこから、真っ赤な体毛をした大きな狼型の魔物が3体、姿を現した。 


(レッドウルフだ!)


 その場に緊張感が走る。


 ガシャン


 アイザックさんは兜を被り、鞘から長剣を抜いた。


 リュシアさんは下がって、弓を用意する。


 シュレさんは、さりげなく僕らを庇うように前に立って、手にした杖を軽く持ち上げて構えていた。


「…………」


 その様子を見ながら、僕は手袋をした右手で『ホーンナイフ』の柄を掴んでおく。


(いざとなったら、これで……)


 そう備えておく。


 そんな僕の隣で、アイネは『木の盾』を構えていた。


『グルルル……ッ』


 3体のレッドウルフは唸り声をあげ、飛びかかる寸前の低い構えになった。


 次の瞬間、


 ダンッ ザキュン


 アイザックさんが疾風のように踏み込んで、レッドウルフの1体を袈裟切りにした。


(え……?)


 その速さに驚く。


 あの素早いレッドウルフが回避もできず、斬り殺されたんだ。


 血飛沫が舞う中、彼はグルンと回転して、もう1体のレッドウルフへと長剣を振るう。


 ザキュッ


 逃げようとしたレッドウルフの前足が吹き飛ぶ。


 アイザックさんは追撃しようとして、けれど、残ったもう1体が必殺の火炎を吐こうと大きな口を開けていた。


 ズドン


 その頭部に、リュシアさんの放った矢が突き刺さった。


 口を開けたまま、そのレッドウルフは地面に崩れ落ちる。


 ほぼ同時に、前足を失ったレッドウルフは、アイザックさんの長剣によってとどめを刺されていた。


「ふう」


 彼は息を吐き、ガシャンと兜をあげる。


 リュシアさんは魔物の頭に刺さった矢を引っこ抜き、状態を確かめてから、矢筒に戻していた。


(……凄いや)


 本当にあっという間だった。


 もっと凄いのは、レッドウルフを3体も倒したのに、3人とも当たり前のような顔をしているところだった。


 それだけ実力に自信があるということ。


 アイネも、


「かっこいい……」


 と呟いて、瞳をキラキラさせていた。


 それに気づいて、アイザックさんは少し照れたように視線を外し、リュシアさんは嬉しそうに笑って、その尻尾を躍らせた。


 シュレさんは、


「ふふん」


 無表情ながらもちょっと得意げだ。


 なるほど。


(これが本物の冒険者、かぁ)


 思わず、3人を見つめてしまう。


 アイザックさんは「ほら、先を急ぐぞ」とぶっきら棒に言って、1人で歩きだした。


 あ……。


「解体、しなくていいんですか?」


 僕は確認する。


 リュシアさんは肩を竦めて、


「レッドウルフの素材ぐらいなら、別に要らないかな。それに何より、私たちの目的は『ゴブリン討伐』なんだから」

「…………」


 そ、そっか。


 アイネも『ちょっともったいない……』って顔をしてたけど。


 そんな僕らの肩を軽く叩いて、


「さ、行きましょ」

「あ、うん」

「はい」


 促すリュシアさんに頷いて、僕らとシュレさんも、アイザックさんを追って歩きだした。

ご覧いただき、ありがとうございました。


壊れていたインターネット機器の修理が終わりました。どうもお騒がせいたしました。


本日ももう1話更新予定です。

もしよかったら、どうかよろしくお願いします~!

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こちら、作者の書籍化作品です。

書籍1巻
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書籍2巻
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もしよかったら、こちらも、どうかよろしくお願いしますね♪
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 有言実行で二人を守るアイザック達。 ある意味で初めて見る冒険者達としては理想的なのかも知れませんね。 尤も他の冒険者の判断基準を彼等にするのは不安も有ります…
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