第10話 鮮度が大事
日暮の言うとおりパンツは確かに戻した。
しかし、それはあらかじめ用意したダミーのパンツだ。
ゼロは万が一の事態に備えては事前に白井のパンツのレパートリーを調べ上げ最も干される確率の高いパンツのダミーを用意していた。鳴海はそれを本物とすり替えたのだ。
全くゼロの抜け目のなさには恐れいる。まあ、何はともあれこれでミッションコンプリートだ!
鳴海は初めてパンティーの神様と出会った浜辺に来ていた。
本当に長い戦いだった。何度も心は折れかけたが決して諦めることはせず、前に進んだ。その努力が今やっと報われる。
鳴海は浜辺につくと深呼吸をした。そして、両手でパンパンと2回手を叩き「出でよ! パンティ-!!!」と高らかに叫んだ。
別に頭がおかしくなったわけではない。
パンティーの神様に用があるときはそうやって呼べと言われたのだ。
すると、激しい雷鳴とともにパンティーの神様が降臨した。
その姿は女神としか言いようがない美しさと、気高さを兼ね備えている。
「久しぶりだな、少年よ」
「例の物持ってきたぜ」
鳴海は勝ち誇った顔で力強く握りしめていたパンツを神様に手渡した。
「おお!! お前これは……」
感動しているのかパンティーの神様がぷるぷると震えだす。
そして、
「裁きの雷!!!!!」
と叫び鳴海を指を指した。
一瞬目の前が光ったと思った時には全身が激しく痙攣し気がつけば鳴海は砂浜に倒れていた。そして、視界が暗くなり意識が途切れていった。
「殺すきかぁぁぁ!!!!!!!」
鳴海は立ち上がり叫んだ。
危うく三途の川を渡りそうになったが、鳴海の驚異的な生命力が魂を現世に引き止めた。
「私を誰だと思っている? 死なぬ程度に加減はしてある」
「なんで!? なんで!? なんで俺雷に打たれたの!? マジで意味分かんないだけど!?」
相変わらず理不尽さ満点だった。
期限内に目的を達成したのに雷に打たれる意味が分からない。
「この戯けが! お前は何もわかっていない!」
パンティーの神様が激怒した。
「何がだよ! ちゃんと白井のパンツ持ってきたじゃないか!? もしかして疑ってんのか? でもなこれは正真正銘白井のパンツだぜ!?」
鳴海がそう言うと、パンティーの神様はため息をつきながら頭を抱えた。
「確かにそれは間違いなく白井 花のパンツだ」
「だったらなんで……」
「少年よ、何で私が怒っているかわかるか?」
知らんがな
「全くわかりません」
鳴海はきっぱりと言った。
「パンティーは鮮度が大事だと言ったはずだ! 何故使用済みの物を持ってこない?」
「聞いてないけど!?」
「ん、そうか? まあいい。お前はあれか、一から十まで説明しないとわからないタイプか?」
「俺パンティーの英才教育受けてないんで検討もつきませんよ」
「そっか、それは失敬! ふはははははは」
パンティーの神様は適当に謝罪する。
「あのー、それでパンティ様」
「ん、なんだ?」
「試練はどうなるんでしょうか?」
「何を言っている。続行に決まっているだろうが」
「無理ですよ! 俺、白井に死ぬほど嫌われてるんですよ。たった2日で使用済みパンツ手に入れるなんてどう考えても不可能ですよ!」
「人間死ぬ気でやればなんでもできる。それに男が1度やると言ったら最後まで筋を通さぬか」
パンティ様
やるなんて一言も言った覚えは無いです
「だったらせめて期限を少しでも伸ばして……」
「おっと! そろそろパンティータイムの頃合いだ。さらばだ少年よ」
「えっ、ちょっと待って!」
するとパンティ様は鳴海の話を聞く間もなく景色に溶け込むように姿を消した。
嘘だろ
あと残り2日だぞ?
こんなのルパ○三世でも不可能だろ
終わった
完全に終わった
鳴海は絶望のあまり全身の力が抜け膝から崩れ落ちた。行き場のない怒りを右手に込め砂浜にぶつける。
溢れる涙が止まらない
「……くそっ、なんだよ……パンティータイムって」




