第11話 起死回生
「というわけなんだ。頼む、どうしてもお前らの力が必要なんだ」
鳴海はファミレスにいた。あの後、鳴海は藁にもすがる思いで2人に連絡をとった。
残り2日
白井の使用済みパンツを手に入れることが、できなければ鳴海は神の裁きにより絶命し生まれ故郷の北海道は地獄の業火で焼き滅ぼされる。嘘みたいな話だが本当だ。
鳴海は白井に徹底的に嫌われている。あの日以来目も合わせてくれないし、露骨に距離を置かれている。
白井のパンツを手に入れるためにまずは、なんとしてもターゲットに近づく必要がある。日暮とゼロの変人2人が白井と接触できる可能性は低そうだが鳴海よりは可能性があった。
「親友のためなら、私頑張るよ!」
日暮はあっさりと協力してくれた。
「別に鳴海が死んでもかまわないが、夕張メロンが食えなくなるのは困るから仕方なく手をかしてやる」
ひどい言い草だがゼロも協力してくれるらしい。
「ありがとう、早速なんだかお前ら白井との接点はあるか?」
鳴海は重要事項を確認した。
「私はクラスも違うし話したことないかな」
「あるわけないだろう」
だよね。なんとなくそんな気はしていた。
「まいったな。例の物を手に入れるためには、なんとしても白井とコンタクトをとる必要があるしなぁ」
「鳴海は白井さんと同じクラスじゃなかったけ?」
日暮が鳴海に疑問を投げかける。
「いや、見ただろ。俺はあの日以来、白井にめちゃめちゃ嫌われてる」
あの日、日暮は教室でのひと悶着を見ていたはずだ。
「えっ? パンツ貰おうとしただけでしょ?」
日暮が不思議そうな顔で言った。どうやら、日暮と白井のパンツに対する考えは大きく違うらしい。
「いや、確かにそうだが……、はあ、お前みたいなやつがターゲットだったらこんなに苦労しなかったのになぁ」
鳴海は思わず不満を漏らす。
「仮に白井に接触できたとして、どうやって物を手に入れるつもりだ?」
「そこなんだよ! どうすればいいゼロ?」
ゼロはガスマスクの隙間にストローを差し込み飲み物を飲んでいる。どうやら人が多いところでは決してマスクを外さないらしい。
「僕はそもそも人と関わりたくない。だから会うという選択肢は論外だ」
「じゃあ、どうすればいい?」
「白井とその家族が不在のタイミングを狙って盗む……、しかし、リスクが高いのであまりおすすめしないがな」
「ああ、もうどうすればいいんだ! こうなったら、いっそのこと薬を盛って黙らせるしか……」
鳴海が投げやりに頭をかいた時だった。
「エスカルゴ丼特盛お待たせしました」
店の店員がドスの聞いた声で、注文したものテーブルの上に力強くドンっと置いた。
ったく、なんて態度の悪い店員だよ
しかし、鳴海は店員の顔を見て驚く。
「うげっ、白井!?」
なんという偶然か。
白井はここでアルバイトをしていたらしい。
「うげっ、じゃないわよ! あんた達、深刻な顔してなんて話してるのよ」
白井がギロッと鳴海たちを睨む。
「ちょうど良いところに! 白井この後、少し話があるんだ!」
鳴海はまたとないチャンスに思わず立ち上がった。
「嫌っ! この前の話のことだったら絶対あり得ないから」
「頼む、本当にもう後がないんだ」
「ふんっ、仕事中に話しかけて来ないで。あんた達みたいのと知り合いと思われたくないわ」
そう言って白井はその場から立ち去ろうとした。
くそっ、やっぱり無理か
そう思った時だった。ゼロが急に立ち上がり馴れ馴れしい感じで白井に肩を組んだ。
「は? えっ、ちょっと何!?」
突然の出来事に白井が驚く。
「久しぶりだな、花ちゃん! 元気にしてたか!」
ゼロが注目を集めるようにわざとらしく大きな声で喋る。そして、鳴海と日暮を交互に見た。
なるほどな
そういうことか!
ガスマスクのせいで表情はまったく見えなかったが意図は伝わった。
「私の大親友の花ちゃん! また前みたいにノーパンしゃぶしゃぶ喫茶行こうよ!」
「そうだな、いつもみたいに4人で仲良く行こうぜ! ノーパンしゃぶしゃぶ喫茶!」
鳴海たちは3人で白井を囲みわざとはしゃいだ。
全身黒づくめのガスマスクの人物、手錠をかけている女の子に親しげな様子で話しかけられる店員の姿を見て周りの客たちの視線が集まりざわつく。奇異の視線を向けられた白井の顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
「ちょっと!? あなた達どういうつもり!?」
白井が小声で鳴海たちを睨みつける。
「2,3分だけでいい。仕事が終わったあと少し時間をくれ。そうしたら誤解を解いてやる。もしノーと答えるようであれば、後はわかるよな?」
残り2日の命
外道と言われようが手段を選んでる場合じゃない。
「わかった、わかったわよ。この卑怯者……」
白井が涙目で鳴海を睨む。
「オーケー、約束破るなよ」
白井がコクッと頷いたのを確認すると、
「あれ? みんなよく見たら、俺たちの知ってる花ちゃんとは別人だぜ。お騒がせしてすみません」
「本当だ、私の親友に似てたからびっくりしちゃった。ごめんね」
「おおっと、僕としたことがうっかり間違えてしまった」
「覚えておきなさいよ、あなたたち……」
白井は恨めしそうな顔をして厨房に戻って行った。
よし、とりあえず何とか話す機会を得た。
あとは3人でどうにかするしかない。
鳴海たちは白井の仕事が終わるまで、ずっと店の前で待っていた。しばらくすると、白井が店から出てきた。
「あんた達ずっとそこで待ってたの!?」
「当たり前だ。逃げられる可能性もあるからな」
「別に逃げるつもりはないわよ。約束はくらいちゃんと守るわ」
「そうか、それは良かった。それじゃあ行くぞ」
「はあ!? 行くってどこへ?」
「日暮の家だ」
「あんた達、私を家に連れ込んでどうするつもり? まさか3人がかりで私を襲う気じゃ……」
「ちょっと話すだけだって言ったろ? 俺たちがそんな極悪非道な人間に見えるのか?」
「何をされるかわからない恐ろしさを感じるわ」
「心外だな」
「もし、何かあったらすぐに警察を呼ぶからね」
「安心してくれ。それに警察官ならわざわざ呼ばなくてもいる」
「何それ? どういう意味?」
「そのままの意味だ」
「いや、意味がわからないんだけど……」
「行けばわかる。それにここで話しても注目を集めるだけだろ?」
「む、それもそうか」
白井は渋々納得し日暮の家に行くこととなった。




