第十三話 三人とのお別れ
#第十三話 三人とのお別れ
とんだ悪夢だった。
三人と交互に解呪した。
しかも、おやすみのご挨拶とは違う場所に!
小娘には過激すぎる夢だったけれど、起きてしまえば相手にするのは一人なので気分が楽になる。
「クロエ、おはよう」
「おはようございます、ルークさま」
ルークさまは少ししゃがまれた。これはきっと夢の続きをしたいだけだ。
「言っておきますけど、あれは夢だからお許ししたのであって、起きてる時はしませんからね」
「ちぇっ」
なんだか腹立たしい!
私はルークさまをほったらかしにして、食堂に行った。
朝食を食べながら改めて皆に宣言するように口を開く。
「三人とデートもしましたし伯爵の商談も終わりましたのでそろそろ自宅へ帰ります」
エイルさまとは前回一緒にカップを買いに行ったからね。
「そうか」
ルークさまはとても悲しそうな顔をされる。
「そうなのね」
ソフィア様はとても悲しそうな顔をされる。
「仕方あるまい」
前子爵は困った顔をされる。
「ルークさまもレオンさまもエイルさまも一緒に過ごせて大変楽しかったです。ありがとうございます」
ルークさまに向かって言ってペコリと頭を下げた。
「ソフィア様にはドレスもお貸しいただき、お化粧もしていただき私が百倍は綺麗になれて嬉しかったです。ありがとうございます」
ソフィア様に向かってペコリと頭を下げた。
「前子爵もいきなり押し掛けて住まわせていただきありがとうございます」
前子爵に向かってペコリと頭を下げた。
私は一気にまくしたてた。
何故ならじっくりとお話すると自分の気持ちが揺らいでしまうから。
ここにいると三人のうち誰か一人を選ぶなんて出来ない。
「クロエ」
「ルークさま、実家に戻ってもお手紙さえいただければ健全なお付き合いなら喜んでいたしますわ」
「そうだな、分かった」
ルークさまは聞き分けよく、それ以上は何もおっしゃらない。
そうしてルヴァン家の皆様にお別れのご挨拶をして部屋に荷物をまとめに戻った。
荷物といっても大したものはなく、着替えの肌着が幾つかだけなのでトランクケース一つに収まってしまう。
ドレスは着て来た一着以外はソフィア様にお借りしたものしかない。
三人とお揃いのカップも丁寧に包んでいるとドアがノックされる。
「クロエ様、奥様がお話があるとの事です」
私はカップを机の上に置いてソフィア様の部屋に行くものと思いながら入り口を見た。
「どうぞ」
ドアが開くとソフィア様だった。
てっきりアンナが私を連れに来たのかと思って驚いた。
「ソフィア様、お伺いしましたのに」
立ち上がってドアに近寄るとソフィア様は部屋に入るなり私を抱きしめた。
「クロエちゃんいつでも遊びに来てね。それとドレスはきれいにしてから送るから」
「まあ、ありがとうございます。大切にします!」
私は感傷的になって涙がこぼれるのを堪えた。
片付ける荷物もないのでしばらくソフィアさまと色々お話をして、そう言えばルークさまがお仕事に行かれるのをお見送りしたいと思い玄関に向かった。
「ルークさま、最後にもう一度皆さんにご挨拶したいのです」
「ああ、そうだな。二人ともそう思ってる」
私はルークさまを抱きしめ(見た目には抱きついているようにしか見えないだろうけれど)、背伸びした。
ルークさまの瞳に私が映るのが見えるほどの距離で見つめ合った。
それからゆっくりとしゃがまれて、私はルークさまの唇を通り越した。
「ルークさま、大好きです」
おでこにキスをした。
「クロ、いつでもおいで」
レオンさまに抱きしめられると少し息苦しく感じる。
手加減はされているのだと思うけれど、それでも別れを惜しむように力を込められる。
でも、それも嬉しい。
しばらくそうして抱きしめられてから、レオンさまは私の頭をぐしゃぐしゃにして、それから頭を撫でられた。
「レオンさま、大好きです」
レオンさまのおでこにキスをした。
「ちーちゃん、帰っちゃうの?また来る?」
「ええ、エイルさまにお会いしにまた来ますよ」
エイルさまは私に抱きつかれて、顔を埋めて、私の大切な膨らみを確認するように顔を左右に振られる。
私はぎゅーっと抱きしめてしばらくエイルさまの好きにさせた。
「エイルさま、だいすきです」
おでこにキスをした。
ルークさまは今日は伯爵から使いが来ているらしく、外から馬の嘶きが聞こえて来た。
「ああ、急かされてるな。クロエ、そろそろ行って来る」
「行ってらっしゃいませ」
私は玄関先でルークさまの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
こうして私のルヴァン家滞在記は幕を閉じた。
「ルークさま、お帰りなさい。お疲れさま」
「クロエ!あれ?帰ったんじゃ?」
「実家が大規模メンテナンスでしばらく住めないのでご厄介になりなさいとお父さまが」
「クロエ!」
私はルークさまに抱きしめられた。
日替わりだんなさま おかわりへ続く




