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擬神クタアト  作者: 深崎伸
序章
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序章


 『――お前を勘当する』


 地面に打ち倒され殴打の苦痛に喘ぐ俺に向けて、爺さんがただ淡々とそれだけを告げる。うつ伏せの体勢の俺から爺さんの表情を窺うことは叶わなかったが、どうせゴミを見るような目で見下ろしているに決まっている。

 糞爺ぃが!

 爺さんの杖で散々に打ち据えられた俺は、毒づきながらもノロノロと腕を伸ばし傍らに転がる己の六尺棒を掴み取った。それを支えに痛め付けられた身をヨロヨロと起こす。

 勘当だぁ?

 上等だ、こんなクソ田舎、言われなくともこっちから出て行ってやる。

 幼き頃から共に有り手に馴染んだ六尺棒を投げ捨て、俺はバックパック一つだけを背負う。その身軽な格好のまま自室を飛び出し、長い下り石段に続く鳥居をくぐろうとした俺であったが、唯一の心残りである結夢(ゆめ)の――妹の手首を掴んだ。

 まだ高校生になったばかりの妹が、こんなド田舎に骨を埋める必要など無い筈だ。爺ぃ独りで朽ち果てていくのがお似合いだ。

 だが、鳥居の外に引っ張り出そうとした妹の体はビクともしなかった。小柄な体でありながら、まるで根が生えたように微動だにしない。

 焦った俺は肩越しに背後の結夢へと振り返った。

 「――!?」

 そこに居る筈の妹の姿は掻き消えていた。妹の手首を掴んだままであるにも関わらず。

 慌ててその自分の腕に目を向けたが、俺が掴んでいたのは妹の手首などではなかった。

 小さくか細い腕の骨。

 まるで造り物のように真っ白な腕の骨。

 妹の腕の骨。


 どこか遠くで鈴の音が鳴っている。


 「――うわぁぁぁっ!?」


 薄暗い廃洞の奥底で、相馬優星(そうまゆうせい)は絶叫と共に跳ね起きた。暗闇の中、彼の絶叫だけが幾重にもこだましていく。

 「…くそっ!」

 夢と気付き独り毒づきながら、優星は額に浮き出た汗の粒を拭う。

 この悪夢にうなされるようになってからどのくらいの時が経つのだろう。

 後悔の念に、どれだけ苦しめられてきたのだろう。

 寝袋の中から上体を起こした彼の指先に、傍らに置かれていた棒が触れる。

 樫の木で造られた、使い込まれた六尺棒。光源の無い暗闇の中で、滑らかな表面はこれまでと変わらず指先に良く馴染んだ。

 幼き頃から祖父に棒術を叩き込まれた優星であったが、六尺棒もまたその祖父に授けられた物であり、彼自身の分身と呼んでも差し支えがない程の長い時間を共に過ごしてきた。

 それ故に彼が3年前に祖父から勘当を言い渡された際、決別の意味で神社に残していくべき物でもあった。少なくとも当時の優星もその心積もりであった。

 だが一緒に連れて出るつもりだった妹は、祖父を一人残してはいけないと彼の手を振り解き、代わりにこの棒を押し付けてきた。


 (あの時に……)


 これまで幾度繰り返したのかも分からぬ悔恨が、優星の胸中で激しく渦巻く。

 妹の意志など無視して、あの時に無理矢理にでも神社から連れ出すべきだったと。


 “あの時”こそが相馬優星と結夢、たった二人の兄妹の今生の別れの刻となってしまったのだから。

前作「忌導キャリバー」で自分の読みたい話を書くという動機は完遂でいましたので、今作は少しだけ読者様を意識するようにしたいな、と思い今流行(?)の現代ダンジョン実況配信物を書こうと思い立ちました。

問題は私が現代ダンジョン配信物の既存作を読んだことがないことと、そもそも現実のネットの実況動画を見たことが無いのですが。

そこまで長い話ではありませんが、筆自体が遅いので気長にお付き合いお願いいたします。

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