15-7 私、大魔王になりました
食堂の前で大きく深呼吸。
ここから私は、大魔王として兄姉たちに接しないといけない。といっても、いきなり威厳なんて出るわけないから、いつも通りに振る舞うべきなのか。
(というか、いつも通りってどんな感じかしら……?)
兄姉たちと接点がなさすぎて、どう接したらいいのかすらわからない。
しばらく考えてみるけど、今まで自分がどんな話し方をしていたのかも曖昧になってくる。考えるのはやめよう。
もう一度深呼吸してから、これから私と歩む二人に視線を向けた。
二人とも、迷いのない笑顔で私の背中を押してくれる。
私も笑顔を返し、扉に手をかける。そして、そのまま開いた。
兄姉たちはこちらを一瞥しただけで、また暇そうに宙を眺め始めた。父さんが入ってきたときとは違い、誰一人として立ち上がらない。
少ししてから、アザゼル兄さんだけがおもむろに立ち上がり、驚いた顔を隠そうともせず口を開く。
「ノワエ、お前どうして……」
「どうしても何も、話が終わったから戻ってきたのよ」
「ば、馬鹿な……」
これだけ狼狽えるということは、兄さんは呼び出された先に何があるかを説明されていたのか。
普段は凛々しい兄さんが、まるでお化けでも見た子供みたいな顔をしていて、思わず吹き出しそうになる。
笑いをこらえながらディースとルルカを連れて、父さんと同じように堂々と食堂を歩く。
「おいおいノワエ、いくらキミでもここに魔王族以外を入れちゃいけないことくらい……」
ウィルディース兄さんの呆れた声を無視して、私は父さんの席――大魔王だけが座れる席に腰を下ろした。
その蛮行に、イレアナ姉さんを含め、全員がキョトンとした顔でこちらを見る。
(こんな顔するんだ……)
初めて見る、兄姉たちの素の表情。
笑いをこらえながら、右手に刻まれた大魔王の印を見せつけると、全員がそろってさらに目を丸くした。
「兄さん、姉さん。私、大魔王になりました」
刻まれた紋章が鈍い光を放つ。
「今日から魔界は、私のものです」




