便利屋
此処は『化け猫の国』。
明けない夜、白夜の闇が支配する国。
私ミケは、森の奥深くにある祠に来ておりました。
この祠にはある言い伝えがありました。
《なにか困りごとのある者は、この祠にお供え物をせよ。さすれば『便利屋』が救世主が如く助けてくれるであろう》
大人たちはこの祠を気味悪がっておりました。
この祠にお供え物をすると、次の日には必ずなくなっているからです。
ですからここ数年、この祠に近づく者はおりませんでした。
だから私は一人で来ました。
言い伝えを信じているわけではありません。
でも…もし言い伝えが本当でこの国を救ってくれるなら、私はそれに縋りたかったのです。
便利屋が何なのかは知らないけど、どうしても助けてほしかったのです。
両手の手のひらをギュッと握り合い、強く願います。
「便利屋さん、お願いします。『白夜の怪物』から私たちを救ってください」
『とある世界の果て』
そこに便利屋はあった。
「おいエース。便利屋の依頼だぞ」
目つきの悪い赤髪の少女クイーン・ガルハートは、昼間からパンツ一枚で昼寝するエース・ベルクに向かってそう言った。
だが少年は起きなかった。
心地よいそよ風に当たりながらとても気持ちよさそうに寝ている。
「ッチ。昼間っからねてんじゃねえ!!」
「ッゴファ!! ゴホッゲホッゲッオェ!!」
クイーンの肘が、エースのみぞおちを襲った。
「ハア…ハア…テメエ何しやがんだクイーン!! 危うく昼飯ゲロるところだったろうが!!」
「仕事だボケナスが!! 昼間っからゴロゴロしやがってこの廃人が」
「うるせえ!! 気づいたならお前が行けよ。わざわざ俺を起こさなくても」
「化け猫の世界はお前の担当だろうが。それに私はこれから『炎の国』の龍退治の依頼がある」
「…めんどくせえなクソッ」
ボソリと、クイーンには聞こえない声でつぶやいた。
「はあ…しゃあねえ、行くか。今回はちゃんと給料でるんだろうな」
「それはキングに言ってくれ。私に言われてもどうしようも出来ん」
クイーンはそう言って、店の奥に消えていった。
「しゃあねえ、俺も行くか」
は思い腰を起こし、店の奥に歩く。
『異世界扉の間』
店の奥には異世界へと繋がる扉が100存在する。
それは現在、存在が確認されている異世界と同じ数である。
「あれエース、これから仕事かい?」
おにぎりを咥えてエースに話しかけた金髪の少年。名前はジャック・バビル。エースの同僚である。
「まあな。なにかお見上げでも買ってこようか?」
「今回は、どの世界に行くの」
「…化け猫の世界だっけかな」
「ふーん…じゃあ、マタタビゼリーを頼むよ」
「オッケー。そんじゃまあ行ってくるわ」
そう言って、エースは扉を開け、そして光の中に入っていった。
「…行ってらっしゃい。最強くん」




