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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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車椅子と補助器具

最終調整は、静かな集中の時間だった。


かおりは作業台の前に立ち、完成形となった二つの道具を改めて見つめる。


一つは、車椅子。

もう一つは、足用の補助器具。


「……よし」


まずは車椅子からだ。


最終型では、右手側に小さなレバーを取り付けた。

握れば前に進み、倒し具合で速度を調整できる仕組み。


力は弱い。

あくまで“補助”。


そして、最も重要なのは――


「レバーを離せば、止まる」


常に魔力を送り続けない構造。

手を放せば、即座に魔力の流れが遮断される。


「これなら……」


自分で操作もできるし、

後ろから押すこともできる。


「どちらか一方に依存しない」


それが、この車椅子の一番のポイントだった。


次は、補助器具。


こちらはさらに慎重だ。


「成長、するものね……」


対象は、まだ十代半ばの少女。

身体は、これから変わる。


そこで、関節部とフレームにスライド機構を入れた。

無理のない範囲で、長さを調整できる。


「一気に変えない。少しずつ」


力の補助も、微調整できるようにした。

魔石の位置を変えることで、風の圧を弱めたり、さらに弱くしたり。


「……実際に着けてみないと正解は、分からないけど」


だからこそ、“決めすぎない”。


使う人の感覚を、最優先にする。



「ほう……」


爺さんは、二つの道具を順に確認していた。


触り、持ち、構造を確かめる。

魔力の流れも、じっと感じ取っている。


「……うむ」


しばらくして、短く頷いた。


「これは、良い」


かおりは、ほっと息を吐いた。


「線も、越えておらん」


「治療でもない」


「兵器にもならん」


「量産も、難しい」


「……合格じゃ」


「よかった……」


思わず、肩の力が抜ける。


「説明書も、ちゃんと付けます」


かおりは、手元の紙束を指した。


使用方法。

注意点。

やってはいけないこと。


専門的すぎない言葉で、丁寧にまとめてある。


「……親切すぎるくらいじゃな」


「分からないまま使うのが、一番怖いので」



その日のうちに、爺さんの友人が出発することになった。


「預かろう」


「責任を持って、届ける」


「お願いします」


両製品は、木箱に収められた。

衝撃を吸収するよう、中には布を詰めている。


「結果は……」


かおりは、少しだけ言葉を選んだ。


「教えて、もらえるんですよね?」


「ああ」


爺さんは、当然のように答える。


「通信魔道具がある」


「伯爵家にも、な」


「何かあれば、すぐに分かる」


それを聞いて、胸の奥が少し軽くなった。


「……安心です」



出発を見送りながら、かおりは小さく呟いた。


「役に立てば、いいな……」


「立つさ」


爺さんは、断言する。


「ただし!結果が良くとも、慢心するな悪くとも、落ち込むな道具とは、そういうものじゃ」


かおりは、静かに頷いた。


「はい」


遠ざかっていく背中を見送りながら、思う。


これは、終わりじゃない。

始まりでもない。


ただ一つの、“試み”。


結果は、まだ分からない。


でも。


「……待つしかないわね」


かおりは、倉庫へと戻った。


次に手を動かす準備を、静かに整えながら。

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