寮生活、はじめました(また勝手に)
「……なんで?」
かおりは、ぽかんとしていた。
朝、学校予定地の横に昨日まで無かった建物が増えてる!?明らかに!?普通に!?
しれっと。
「……なんで増えてるの?」
二階建てで横長。窓ずらーっと並んでる。
洗濯物干せそうなベランダ。
どう見ても。
「寮だよね、これ」
背後から声。
「はい、寮です」
振り向くとリーナがにこやかに。
「はい、じゃないが!?」
「昨晩決裁しました」
「昨晩!?」
「大工班が夜通しで」
「寝て!!?」
おかしい。この領地、建築スピードがバグってる。もはやゲームの一晩建築。
「……で?」
嫌な予感しかしない。
「なぜ寮が?」
「簡単です」
指折り説明開始。
「遠方の子供が通えない」
「はい」
「夜学の大人が帰るの大変」
「はい」
「冬は雪で移動不可」
「……はい」
「なら、住めば良いのでは?」
「またそれ!!」
毎回それ!!困ったら「住めばいい」。
領主思考が雑すぎる。
「で、誰が管理するんですか?」
「はい」
はい??
「寮母さん的な人、必要ですよね?」
「はい」
「生活指導、必要ですよね?」
「はい」
「食事管理、必要ですよね?」
「はい」
「つまり?」
にっこり。
「かおりさん、お願いします」
「なんでぇぇぇ!?」
毎回それ私!?
「いやいやいや!私もう」
・学校設計
・給食監修
・印刷室
・カレー屋相談役
・ラーメン監督
「肩書き多すぎるんですけど!?」
「兼任です」
「ブラック企業か!!」
数時間後。
「……はい並んでー」
かおりは木箱の前に立っていた。
もう諦め顔。
「今日から寮生活始まります」
ぞろぞろ。
子供たちに、大人とそれに職人。
なぜかおじいちゃんも。
「おじいちゃん何で?」
「家より賑やかだから」
理由がかわいい。
「えーと……部屋割り……」
紙を見る。
【子供部屋】【大人部屋】【職人部屋】
ざっくり!!
「もっと細かく!!」
でももう時間ないので、とりあえず振り分け。
「子供こっちー!」
「はーい!」
「走るなー!」
「押すなー!」
もう合宿の雰囲気!完全に合宿。
「先生ー!二段ベッドだー!」
「上乗るー!」
「落ちるぞー!」
きゃーきゃー。
楽しそうすぎる。一方大人部屋。
「……修学旅行みたいだな」
「布団並んでる……」
「なんかワクワクするな……」
なんでおっさん達まで楽しそうなの。
職人部屋。
「夜通し将棋できるな」
「寝ろ!!」
夕方。
「はい、生活ルール説明します!」
かおり、黒板前で完全に生活指導の先生。
「門限あります!」
「えー」
「えーじゃない!」
「夜更かし禁止!」
「えー」
「だからえー言うな!」
「掃除当番あります!」
「えー」
「当たり前だ!」
「洗濯は自分!」
「えー」
「母親じゃない!!」
子供か!!
「あと!」
全員注目。
「火遊び禁止!夜中騒ぐな!廊下走るな!」
「「「はーい」」」
絶対守らないやつだこれ。
夜。しーん……。
「……静か」
意外と平和。
「案外いける……?」
その瞬間。
ドタン!!
「先生ー!!」
「何!?」
「上の段から落ちたー!」
「ほらぁぁ!!」
別方向。
「歯磨き粉どこー!?」
「知らん!」
さらに。
「枕投げ開始ー!!」
「やめろぉぉぉ!!」
戦争勃発。
「消灯だって言ったよね!?」
「修学旅行テンション止まらん!」
「気持ちは分かるけど寝ろ!!」
深夜になってようやく静かに。
廊下を歩く。
すーすー寝息。子供たち。
疲れてぐっすり。
大人部屋は、いびき合唱。
「……はぁ」
疲れた。めちゃくちゃ疲れた。
でも、なんか悪くない。
窓の外。灯りのついた寮に笑い声の残り香。
「……ほんとに村っぽくなってきたなぁ」
隣にいつの間にかリーナ。
「どうです?」
「大混乱です」
「でしょうね」
くすっと笑う。
「でも」
かおりも笑う。
「楽しそうでした」
「はい」
少し沈黙、そしてリーナが。
「では次は」
嫌な予感。
「浴場も併設しましょう」
「まだ増えるの!?」
「洗濯場も」
「やめて!」
「あと図書室も」
「止まれぇぇぇ!!」
こうして。かおりの肩書きに。
【寮監(仮)】
が追加されたのだった。
また増えた……




