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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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世界初(たぶん)の教科書と、インクまみれの大発明

「……足りない」


かおりは黒板の前で腕を組んでいた。

夜学三日目。昼学+夜学。

どちらも盛況てか盛況すぎる。


「はい、“麦”って書いてくださいー」


「先生ー!忘れたー!」


「さっきやった!!」


「こっち計算追いつかんー!」


「順番ー!順番ー!」


もう、てんやわんや。完全に個別指導地獄。


「……これ、毎回黒板に全部書くの無理じゃない?」


ふと気づいた。今さらだけど遅い。

横で書記官が死んだ目で言う。


「毎回……同じ字を……百回以上……書いてます……」


「あっ、ごめん」


「手が……麦になりそうです……」


「何その症状」


子供たちは、


「もう一回書いてー!」


「見えなーい!」


「消さないでー!」


カオス!そして。


「先生、家でも練習したい」


ぽつり。小さい声。

振り向くと、子供が紙切れを握ってる。


「でも……何書けばいいか、わからない」


「あ……」


そこでやっと。かおりの頭に電球が点いた。


「あ、そっか」


黒板だけだからダメなんだ。


「配れる物、必要だわ」


「はい?」


「全員が同じ内容を持てるやつ」


「……写本?」


書記官。


「いえ……それだと死にます」


「ですよね」


一人一冊、手書き?無理!絶対無理!

書記官が過労死する。


「うーん……」


倉庫。古紙。本。雑誌。昔の世界。教科書。

印刷。


「……あ」


止まる。思い出す。


「印刷すればいいんだ」


「……いんさつ?」


数時間後、倉庫の奥。


「……あった」


木箱を開けると!ゴムローラー。古いスタンプ。判子。そして。

なぜか図工用の版画セット。


何であるの??


「……小学生の頃やったなぁ、これ」


木を彫って、インク塗って、紙に押すやつ。


「……これ、いけるんじゃない?」


翌日。木工師工房。


「というわけで」


かおりは板を置く。


「これに字を“逆向き”に彫って」


「ほう?」


「インク塗って紙に押す」


「……スタンプか?」


「超巨大スタンプ」


木工師が腕組み。


「同じ物を大量に?」


「そう!」


「……面白ぇ」


職人の目になった!好きなやつだこれ。


「やろう」


数時間後。


「……できた」


木の板。彫られた文字。ちょっとガタガタ。

味がある(雑とも言う)。


「これが……文字の板……?」


インク代わりに煤+油を混ぜた即席インク。

ローラーで塗る。ぬりぬり。


「……いくよ?」


ぺたん。紙をめくる。


「……おお」


くっきり。


【あ い う え お】


「「「おおおおお!!」」」


職人全員がどよめく。


「同じ字が……」


「一瞬で……」


「何枚でも……?」


「量産できます」


どや顔。


「すげぇぇぇ!!」


木工師が叫ぶ。


「これ神道具じゃねぇか!?」


「まだまだ!」


次は計算表!数字。簡単な単語。

どんどん彫る。

ぺたんぺたんぺたん。

紙が積み上がる。


「……早っ」


写本の百倍速い。


「これなら……」


書記官が震える。


「死なずに済む……」


夕方。


即席教科書、完成。


・ひらがな表

・数字表

・簡単な単語

・足し算問題


ホチキス?無い。紐で綴じるが手作り感満載。


「……教科書だ」


なんか感動。翌日。


「はい、今日はこれ配ります」


「「「おおお!?」」」


ざわっ。


「俺の紙だ!」


「字いっぱいある!」


「家に持って帰っていいの!?」


目がキラキラ。


「好きに落書きしていいよ」


「ほんと!?」


「やったー!」


大人たちも。


「これなら……家で復習できる」


「子供にも教えられるな」


あっという間に広がる。


「……すごいな」


かおりは呟く。


「たった紙一枚で、世界変わるんだ」


隣でリーナが微笑む。


「“知識の量産”ですね」


「……あ」


その言葉!しっくり来た!道具を量産。

麺を量産、そして。


「知識も量産かぁ……」


これもう文明イベントでは?

リーナがさらっと言う。


「では、印刷室も作りましょう」


「早い!!」


「学校の隣に」


「だから決断が早い!!」


でも止まらない!もうこの領地。

便利を見つけたら即工場。


「……私、また変なの発明しちゃった?」


木工師が笑う。


「発明?違ぇよ」


「?」


「これ“革命”って言うんだ」


「やめて怖い」


その日。


倉庫の一角に。


【印刷室(仮)】


という札がぶら下がった。

インクまみれの大人たちと。

紙を抱えて走り回る子供たち。

この世界初たぶんの教科書は。

そんな、騒がしくて笑い声だらけの場所から。


ひっそりとでも確実に、未来を刷り始めたのだった。

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