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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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本棚の奥にはだいたい未来のヒントが転がっている

「うーむ……学校、かぁ」


夕方。


工事の喧騒から少し離れた自室で、かおりは椅子にもたれた。

外ではまだトンカントンカン音がしている。

あの人たち、絶対日没までやる気だ。


「元気すぎない……?」


朝から肉体労働よ?普通バテるでしょ。

なのに。


「屋根今日中にいけるぞー!」


「気合いだー!」


祭りのテンション。


「……まあ、楽しそうだからいっか」


くすっと笑う。


でも。


笑ったあと、ふと真面目になる。


「……学校、ねぇ」


勢いで始まったけど、建物だけ作っても、机並べても。

それだけじゃ、ただの箱だ。


「中身がなきゃ意味ないのよね」


授業。制度。流れ。つまり――仕組み。


「物を作るのも大事だけど……」


ぽつり。


「仕組みを作る方が、もっと大事かも」


工場もそうだった。レシピよりライン。

人より流れ。仕組みが回れば、勝手に育つ。

学校も、たぶん同じ。


「……確か、教育系の本あったよね」


本棚を見る。


この世界に来る時、倉庫ごと一緒に持ち込まれてた古紙回収に紛れて居た本たち。


料理本。経営本。雑学本。


そして――ほこり被った一角。


「読んだことないやつ……」


タイトルを見る。


『はじめての教育学』

『子供の伸ばし方』

『学級運営のコツ』

『楽しい授業アイデア100』


……まあいいや。


「何か役に立つかもだし」


床に座って、ぱらぱらめくる。


数分後。


「……ほぉ」


意外と面白い。


「褒めるのが基本……成功体験が大事……」


あー。夜学のあの「出来たー!」の顔。

あれか。


「点数より“出来た実感”……ね」


たしかに。テストよりガッツポーズしてたもんな、あの人たち。ページをめくる。


「レベル別指導……グループ分け……」


「……あ、それ大事」


今まさに混沌だし。

子供と職人とおじいちゃん同じ教室ってどうなの。


さらに。


「教えることで理解が深まる」


「生徒同士で教え合う時間を作る」


「……あ」


思い出す。父に「あ」を教えてた子供。

おじいちゃんが皆に図面教えてた朝。


「……もうやってるじゃん、あの人たち」


無意識に最適解踏んでる。すごいなこの領地。脳筋と見せかけて賢い。


別の本。


『仕組み化のコツ』


「お、経営っぽい」


好きなやつ。


「個人の頑張りに頼るな」


「誰でも回せる形にしろ」


「マニュアル化」


「……はい出たー」


超大事ワード!今の夜学。

ほぼ勢い。かおりが倒れたら即終了コース。


「それはまずい」


ぺらぺら。


「時間割」「担当分担」「記録」


「……あ、日誌とかいるな」


誰が何覚えたか。どこで詰まったか。

データ取れば改善できる。


「学校って、工場と同じじゃん」


思わず笑う。流れを作って、ムダ減らして効率上げて。

やってること、完全にライン管理。


「なんだ、得意分野じゃん私」


急にやる気出てきた。紙を引っ張り出す。

がりがり書く。


・午前 子供基礎

・午後 職業訓練

・夜学 大人

・先生ローテ制

・生徒先生制度(←これ良い)

・進捗表つくる


「……文化祭の準備か私は」


独り言。でも楽しい!その時。


コンコン。


「かおりさん、失礼します」


リーナ。


「どうしました?」


「いえ、まだ起きてらっしゃるなと」


机の紙を見る。


「……また何か企んでますね?」


「人聞き悪い」


「良いことしか企まないのは知ってます」


それはそれでプレッシャー。紙をひらひら。


「学校の“中身”考えてた」


「ほう」


「建物だけじゃ意味ないし」


少しだけ真面目に言う。


「ちゃんと回る仕組み、作らないと」


リーナが静かに目を細める。


「……やはり、かおりさんにお願いして正解でした」


「え?」


「私は“建てる”ことしか思いつきませんでしたので」


「勢い型ですもんね」


「はい」


即答!?


「でも」


リーナは笑う。


「中を作るのは、かおりさんの方が得意でしょう?」


「……まあ、たぶん」


工場も。店も。倉庫も。

全部そうだった。気付けば、仕組み屋になってる。


「何か、少し見えてきたかも」


本をぽんと叩く。


「この学校、たぶんもっと面白くなる」


「楽しみですね」


外では。


「うおー! 梁上がったぞー!」


「夜なのにまだやってる!?」


あの人たちほんと元気。苦笑しながら。

かおりはもう一度本を開いた。

本棚の奥には。


案外。


未来のヒントが、山ほど詰まっているのかもしれない。


「……さて、もう少し探してみるか」


小さく呟き。


ページをめくる音だけが、静かな部屋に優しく響いた。

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