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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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次に回すのは、お腹じゃなくて未来

「……暇ね」


縁側に座って、お茶をすすりながら。

かおりは空を見上げていた。


工場は回ってるし、カレー屋も回ってるし、ラーメン屋も問題なし。


呼び出しゼロ。相談ゼロ。トラブルゼロ。


「完璧すぎて怖いわ」


思わず苦笑する。


手持ち無沙汰で、つい小麦粉を触りそうになる自分がいる。


新しい麺とか。新しい料理とか。


「……いやいやいや」


ぶんぶん首を振る。


やらないって決めたでしょ私。今やったら絶対また騒動。香りで人が押し寄せる未来しか見えない。


「料理禁止、料理禁止……」


自分に言い聞かせる。


でも。


何もしないのも落ち着かない。


「うーん……」


手持ちの帳面をぱらぱらめくる。


道具案。料理案。保存食案。


いっぱいある。


でも今じゃない。


「物はもう十分よねぇ……」


ぽつり。


鍬も。運搬具も。荷馬車も。製麺機も。乾燥麺工場も。


気付けば。


“便利グッズの人”みたいになってるけど。


「もっと別の事、出来ないのかな」


その時。外から声が聞こえた。


「こらー!順番守れー!」


「押すなって!」


「それ俺の籠ー!」


子供の声だ。何だろうと覗くと。

広場で子供たちが集まっていた。


農家の子。商人の子。職人の子。


年齢バラバラ。


収穫した野菜の仕分けを手伝っている……らしい。


でも。


「違う違う!それはこっち!」


「え、聞いてない!」


「数が合わないー!」


ぐっちゃぐちゃ。


「……あー」


かおりは察した。人手は増えた。仕事も増えた。


でも。

 

「教える人がいないのね」


今までは家族単位。親から子へ。

見て覚えろ方式。


でも今は。仕事が増えすぎて。寄せ集めで。

急造チーム。


当然、混乱する。


「そっか……」


胸の奥が、すとん、と落ちる。


今まで。どう作るか。どう運ぶか。どう売るか。


そこばっかり考えてた。


でも。


「どう“覚えてもらうか”は、考えてなかったな」


仕組みを作っても。使える人が育たなきゃ意味がない。


工場も。厨房も。結局うまく回ってるのって。弟子とか職人とか。“慣れた人”がいるからだ。


「……あれ?」


ふと気付く。


「これってもしかして」


道具でも。料理でもなく。


「教育の問題では?」


言った瞬間。なんかしっくりきた。


農家の基礎講習とか。工場の作業訓練とか。

料理人の育成とか。

ちゃんと“教える場”があれば。

もっと楽になるんじゃない?


「学校……みたいなの、いる?」


ぽつり。


子供も。新しく来た保護民も。基礎を学べる場所。


読み書き。計算。道具の使い方。

簡単な仕事体験。


それがあれば。リーナの負担も減る。

現場も混乱しない。


「……あれ、これ結構大事じゃない?」


料理より。新商品より。よっぽど“未来”っぽい。その瞬間。


胸が少しだけ高鳴った。


「あー……」


にやっと笑う。


「なんか久しぶりに、面白いの見つけたかも」


料理みたいな派手さはない。


でも。


じわっと。ゆっくり。確実に効くやつ。


「よし」


立ち上がる。


「リーナに相談だな、これは」


お腹じゃなくて。道具でもなくて。


「次は、人を育てる番か」


風が吹く。

広場ではまだ子供たちが騒いでいる。

でもその光景が不思議とちょっとだけ、希望に見えた。


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