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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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乾燥麺という発想

「……ふぅ」


ラーメンの寸胴鍋の火を落とし、かおりは大きく伸びをした。


餃子の焼き台も、片付けに入っている。

弟子たちの動きも、もう慌てた様子はない。


「うん。ラーメンも餃子も、だいぶ回るようになったわね」


最初の頃の、てんやわんやが嘘みたいだ。


――なら。


「次、行こっか」


ぽつりと呟いた。

厨房の隅に、試作中の麺が並んでいる。


生麺。


打ち立てで美味しい。

でも――


「日持ちしないのよねぇ……」


これが最大の弱点。

毎日作るのは手間。遠くへ売るのも難しい。


「だったら」


一本、麺を指で持ち上げる。


「乾かせばいいのよ」


「乾燥麺、ですか?」


弟子の一人が首をかしげた。


「そう。水分を抜けば長期保存できるの」


「硬くなりませんか?」


「なる。でもね」


かおりは笑う。


「お湯に入れれば戻るのよ」


「……!?」


ぽかんとする弟子たち。

この世界には、まだその発想がないらしい。


まずはパスタから。


「これは元々近い作り方だし、成功しやすいはず」


細長く伸ばした麺を、木枠に掛けていく。

ずらり、ずらり。

洗濯物みたいに並ぶ麺。


「なんか変な光景ですね……」


「干し麺って感じでしょ?」


くすっと笑う。


数日後。


完全に乾いた一本を折ると、

――パキッ。


軽い音。


「よし」


湯に入れる。数分。

ふわりと柔らかく戻る。


「……成功ね」


小さくガッツポーズ。


「これ、保存できますよね?」


「遠くにも売れますよね?」


弟子たちの目が輝く。


「そう。備蓄も出来る」


かおりは頷いた。


「冬でも、凶作でも、食べ物が残る」


その言葉に、皆の顔色が変わる。

ただの料理じゃない。

これは――


領地の保険だ。


「次はラーメン麺も乾燥してみよっか」


「え!?それも出来るんですか!?」


「多分ね。やってみないと分からないけど」


いつもの台詞。

でも、それでここまで来た。


かおりは倉庫から一冊の本を持ってきた。


『長期保存食の作り方』


昔、何気なく回収した古書。


「やっと出番ね、あなた」


ぱらりとページをめくる。


干す。

燻す。

塩蔵する。


保存の知恵がぎっしり詰まっている。


「……食べ物って、奥深いわね」


ラーメン。

餃子。

そして乾燥麺。


「これなら、店だけじゃなくて」


窓の外を見る。


「領地全体に配れる」


家でも作れる。保存もできる。

誰でも食べられる。

それはもう、料理というより――


生活の基盤 だった。


「よーし!」


ぱん、と手を叩く。


「次は乾燥ラーメン、いってみよ!」


弟子たちが笑いながら答える。


「はいっ!」


こうしてまた一つ。

かおりの「ちょっと試してみよう」が

領地の未来を、少しだけ強くしていくのだった。

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