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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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麺の気配と隣にもう一軒

「んー……次は何が楽になるかなぁ……」


厨房の隅。紙に簡単な図を描きながら、かおりは唸っていた。皮むきはピーラーで改善。

仕込みはかなり早くなった。


となると――


「刻み用の台?それとも保存容器?いや、軽量スコップとか……」


考え始めると止まらない。

こういう裏方仕事、嫌いじゃない。

むしろ好き。

目立たないけど、確実に効くから。

そんな時。


コンコン。


「かおりさん、ちょっといいですか?」


工場の職人さんだ。


「はい?」


「例の……これ」


差し出されたのは。


どーん!!


「……でっか」


以前の手回し製麺機より、二回りは大きい。

鉄の骨組み。分厚いローラー。


無駄に頑丈。


「世界観が鍛冶師寄り……」


「量産前提で強化しました!」


「壊れません!」


「十年は使えます!」


「そこまで求めてないのよ!?」


思わずツッコミが出た。


「で、試しに使ってみたんですが」


「え?」


「麺、作れましたよ」


「……え?」


「ほら」


袋を渡される。中には。見覚えのある細長い麺。


「……ラーメンだ」


ちゃんとそれ。完全にそれ。


「コシもあります」


「職人たちで試食しましたが、うまいですねアレ」


「また作らないんですか?」


「え、売らないんですか?」


「いつです?」


「いつです?」


「圧が強い!!」


気づけば。

遠巻きに、じーっと見られている。


兵士。

職人。

なぜか農家のおじさんまで。


……完全に待たれてる!?


ラーメンの匂い事件、忘れてないよねこの人達。


「いや……でも……」


問題がある。大問題。


「カレーとラーメンって、作り方が違う……」


煮込み中心のカレー。スープは煮込みだけど。。

スープ炊き出し、麺茹で、同時進行地獄のラーメン。


同じ厨房は――


「絶対、無理」


戦場になる。

鍋と鍋がぶつかる未来しか見えない。


「……これは私の手に負えない」


観念した。


「リーナに相談しよ」


その日の午後。領主館。


「――なるほど」


リーナは顎に手を当てる。


「確かに、全く違いますね」


「ですよね……」


「カレーは煮込み主体。ラーメンは瞬間調理。

同じ厨房では効率が悪いでしょう」


「はい……」


怒られるかと思った。


「欲張りすぎです」って。


でも。リーナは。にっこり。

とても良い笑顔で。


「では」


さらっと。


「カレー屋の隣にもう一軒建てましょう」


「…………はい?」


「裏の調理場は繋げて広く。共有できる仕込み場は共通化。ただし火元と釜は完全分離」


「……はい?」


「設備も増やして。互いが邪魔にならない動線にしましょう」


「はい???」


話が早すぎる。というか。


「作る前提!?」


「当然です」


即答。


「需要がある。人もいる。技術も揃った」


指を折りながら。


「やらない理由がありません」


「経営者……」


この人、ほんと判断が早い。


「それに」


リーナは少しだけ笑う。


「かおりの“作りたい”は、だいたい当たりますから」


「……」


ちょっと、胸が熱くなった。信頼されてる。

それが分かる。


「……でも、そんな簡単に店って」


「もう設計は始めます」


「早い!」


「職人には明日伝えます」


「早い早い!」


「名前はどうします?」


「そこまで!?」


結局、気づけばカレー屋の隣に。

ラーメン屋(仮)建設決定。


「……なんでこうなるのかなぁ」


帰り道。夕焼けを見ながら呟く。

私はただ。ラーメンが食べたかっただけなのに。


「……まあ」


少し笑う。


「皆が食べられるなら、いっか」


どうせやるなら。美味しいのを作ろう。


この世界一のやつ。遠くで。


トンカン、トンカン。

もう工事の音が聞こえてきた。


「……仕事早すぎない?」


かおりは頭を抱えながら、でも少し楽しそうにため息をついた。

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