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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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味の分岐点と裏方の工夫

「よし……今日からこれでいきます!」


朝の厨房。

大鍋の横に、小さな鍋が二つ。


一つは甘い香り。

もう一つは、鼻にツンと来る刺激臭。


「甘口と、辛口……」


ついに、味の分岐だ。

甘口は、すりおろした果物。

林檎に似た実と、蜂蜜少し。

コトコト煮込むと、自然な甘みが出る。


「うん、優しい味」


子供でも食べられる。これは間違いない。

辛口は。


「……ちょっと入れ過ぎ?」


赤い粉を少量。恐る恐る味見。


「っ……!」


ピリッ、と舌が痺れる。でも嫌な辛さじゃない。後から旨味が来る。


「大人向けね、これは」


兵士とか、職人とか、好きそう。

よし、採用。そして開店。

今日も扉を開けた瞬間。


「お、もう並んでる……」


昨日と同じ顔ぶれも多い。

完全に常連が出来始めている。

なんだか、ちょっと嬉しい。


「……あれ?」


客の一人が看板を見る。


「種類、増えてないか?」


「本日より

 ・甘口

 ・普通

 ・辛口

 選べます」


小さく書いた札。


「へぇ! じゃあ俺は辛口ってやつ!」


「私は甘口にしてみようかしら」


「俺いつもの!」


自然に選ばれていく。

まるで前からあったみたいに。


……良い感じ。混乱もない。


厨房も落ち着いてる。


「甘口二、普通三、辛口一入りまーす!」


「はーい!」


弟子たちがテキパキ動く。

盛り付け。配膳。洗い場。

誰も慌ててない。


「……」


かおりは、少し離れた場所からそれを眺めた。


もう……

私、いなくても回るんじゃない?


少し寂しくて。

でも、それ以上に嬉しい。

これが理想だった。

自分がいなくても、ちゃんと回る仕組み。


「じゃあ……」


腕を組む。


「私は一歩下がって、次の手でも考えますか」


現場が落ち着いたなら。

やる事は一つ。


裏方の改善。

気になっていたのは、野菜の仕込み。


芋。

人参。

玉ねぎ。


「皮むき、遅いのよね……」


包丁だと時間がかかるし、厚く剥きすぎる。

もったいない。


「ピーラー欲しいなぁ……」


前の世界では当たり前の、あの道具。

あれがあれば。


……作れるんじゃない?

鍛冶師と木工師に相談。


「こんな形で、薄く削れる刃を付けて……」


「ほう……削る、のか」


「切るんじゃなくて、撫でる感じです」


説明しながら、自分でもちょっと笑う。

変な注文だよね。


でも――数日後。


「出来ましたよ、試作品」


渡されたのは、小さな金具付きの木の持ち手。


「……それっぽい!」


早速、芋で試す。


シャッ。


「おお!」


スルスル。

薄く、均一に、気持ちいいくらい剥ける。


「これ凄い……!」


もう一本。もう一本。止まらない。


「……楽しい」


危うく全部剥きそうになった。

その日の仕込み。


「早っ!?」


弟子が驚く。


「もう終わったんですか?」


「ふふふ、新兵器よ」


ピーラーを見せる。


「これ使ってみて」


「……なにこれ、めっちゃ楽!」


「薄っ!」


「速っ!」


一気に広がる歓声。


よし!


こういうの。こういう小さい改善。


それが一番効く。店は、順調。


味は増えた。人は育った。作業は楽になった。少しずつ。本当に少しずつ。


この場所は、良くなっている。


「さて……」


夕暮れ。空を見上げる。


「次は、何を楽にしようかな」


かおりの頭の中では、

もう次の“便利道具”の設計図が描かれ始めていた。

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