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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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食卓から広がる可能性

「……何だか、ラーメンから始まって、気づいたら餃子まで作っちゃったわね」


かおりは机に頬杖をつきながら、小さく笑った。

最初はただ、懐かしい味が恋しくなっただけだったはずだ。


「でも……」


視線を台所の方へ向ける。

小麦粉、野菜、肉。特別な素材は使っていない。

ある物で、工夫しただけだ。


「今ある材料で再現できる料理、他にも結構ありそうよね……」


この世界の食事は決して不味くはない。

ただ、選択肢が少ない。それだけだ。


「食が少しでも豊かになれば、皆んな嬉しいわよね」


農作業の後、建設作業の合間、長い一日の終わり。

温かくて、ちょっと特別な料理があるだけで、気持ちは随分違う。


「うーん……」


かおりは立ち上がり、倉庫から持ってきたレシピ本の束を抱えた。


「やっぱり、ちゃんと見てみるかな」


パラパラとページをめくる。

見慣れた料理、懐かしい名前、作れそうなもの、少し工夫が要りそうなもの。


「揚げ物は油の問題があるし……煮込み系ならいけるかしら?」


指でページを押さえながら、頭の中で材料を照らし合わせていく。


「無理に全部再現しなくていいのよね」


少しずつ。

急がず。

この世界の流れを壊さない範囲で。


「できるものから、ひとつずつ」


かおりはそう呟いて、また次のページをめくった。

食卓から始まる、小さな変化の種を探しながら。


かおりはレシピ本を閉じ、ふと思いついたように呟いた。


「……そうだ。商人さんの所で、色々食材を見てみるのも良いわね」


領内外から集まる商人の品は、意外と幅が広い。

見たことのない乾物、香りの強い種子、用途不明の粉末。


「眺めてるだけでも、結構ヒントになるのよね」


以前もそうだった。

道具も、仕組みも、料理も——

実物を見て、触って、香りを嗅いで、そこから発想が広がった。


「もしかしたら……」


ふと、頭の中に浮かぶ色と香り。

少し刺激的で、身体が温まるような料理。


「香辛料っぽい物、あったわよね……」



胡椒に似た粒。

乾燥させた根っこ。

独特の香りを放つ粉。


「全部揃わなくても、似た感じには出来るかも」


完全な再現じゃなくていい。

この世界の材料で、この世界なりの形で。


「……うん」


かおりは軽く拳を握った。


「まずは市場を一周してみよう」


そう決めると、少しだけ胸が高鳴った。

次に作る料理の輪郭が、ぼんやりと浮かび始めていた。


――色が濃くて、香りが強くて、皆で分けて食べられる料理。

そんな予感を胸に、かおりは部屋を後にした。


市場から戻ったかおりは、テーブルの上に並べた袋を眺めて小さく息を吐いた。


「……うん。とりあえず、色々買って来たわ」


乾燥した木の実のようなもの。

粉末状で、嗅ぐと鼻の奥がツンとする香辛料。

甘い香りがする根を刻んだものに、少し土っぽい匂いの粉。


「正直、自信は……無い」


記憶を頼りに選んだだけだ。

前の世界で見たこと、使ったことがある気がする——その程度。


「でも、まあ……それっぽいのは揃った、はず!」


同じ香辛料を一つに絞るのは怖かったので、種類だけはやたら多い。

少しずつ使って、香りを確かめて、組み合わせてみるしかない。


「失敗しても、香辛料スープになるだけよね」


そう自分に言い聞かせながら、かおりは一つの袋を開けて匂いを嗅いだ。


「……おお、これは結構それっぽいかも?」


鼻に抜ける刺激に、少しだけ期待が膨らむ。


「よし。次は、これをどう使うか考えましょ」


鍋の中で混ざり合う香りを想像しながら、

かおりは袖をまくり、調理台へと向かった。


――まだ分からない。けど試しに作ってみる。でも、何か面白い物が出来そうな気はしていた。

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