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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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大きくして回してみよう

――というわけで。


かおりは製麺機を抱え、工場へと向かった。


「……重い」


いつの時代に販売してたのか不明とはいえ、改めて運ぶと中々の重量だ。

木と金属の塊は、しっかり“道具”の顔をしている。



工場に入ると、鍛治師と木工師、それぞれ数名が集まってきた。


「これが、その麺を作る機械か」


「ほう……構造は単純だが、精度が要るな」


製麺機を作業台に置くと、皆が覗き込む。


かおりは、簡単に仕組みを説明した。

回転軸、ローラーの間隔、圧力のかかり方。


しばらく、沈黙。


そして――


「……この大きさのままでは、再現は難しいな」


鍛治師が、腕を組んで言った。


「やっぱり、そうですよね……」


「だが」


続けて、木工師が口を開く。


「二回りほど大きくすれば、加工の余地はある」


「部品も厚く出来るし、歪みも出にくい」


「回す力も、安定するな」


「……出来る?」


かおりが尋ねると、二人は顔を見合わせて頷いた。


「試作なら、な」



方向性は、すぐに決まった。


「まずは、大きめの型を一台」


「それを実際に使ってみて」


「問題が無ければ、量産へ」


今まで何度もやってきた流れだ。

かおりも、リーナも、職人達も慣れている。


「急がない」


「急がせない」


それが、失敗しないための約束。


「じゃあ、まずはその試作品をお願いします」


「任せとけ」


鍛治師は、にやりと笑った。



工場を出る頃。


かおりは、少し肩の力が抜けていた。


「……よかった」


無茶な量産ではない。ちゃんと、段階を踏む。


「大きくなっても、麺は麺よね」


小さく呟きながら、空を見上げる。


ラーメンから始まった話は、また一歩、“普通の道具”に近づいていた。


今度は、工場の中で、ゆっくり、確実に回っていく。


かおりは、工場を後にして自室へ戻った。


「さて……これは、これで一区切りね」


肩の荷が、すとんと落ちる感覚。

製麺機の試作は職人達に任せた。

構造も意図も、きちんと伝えた以上、あとは現場の力を信じるだけだ。


「全部を自分で抱える必要は、もうないもの」



机に向かい、紙とペンを広げる。


「じゃあ次は……レシピ、ね」


頭の中にあるものを、一つずつ整理していく。


・骨の下処理

・煮込み時間の目安

・香味野菜の入れる順番

・火加減

・アクの取り方


「感覚でやってた所も、言葉にしないと」


書きながら、少しだけ笑う。


「私、いつの間にか“教える側”になってるわね」


麺の配合も、いくつかの案を併記した。

細麺、ちぢれ麺、太麺。

どれが正解かではなく、どう違うか。


「プロなら、ここからもっと良くするでしょうし」



書き終えた紙束をまとめ、立ち上がる。


「料理人さんに渡しておこう」


リーナの元にいる料理人達。

この世界で“食”を支えている人達だ。


「私が作るより、ずっと安定するはず」


それに――


「私一人の味、にならない方がいい」


文化として残るなら、多くの手を通って、少しずつ変わっていく方がいい。



廊下を歩きながら、かおりは小さく息を吐いた。


「ラーメン食べたかっただけなんだけどなあ……」


そう呟いて、くすっと笑う。


でも、不思議と後悔はない。


作って、渡して、任せる。

その流れが、ちゃんと回り始めている。


「完成を待つのも、悪くないわね」


かおりは、軽い足取りで歩き続けた。

今度は、“出来上がる音”を聞く番だった。

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