転がり出した麺の行き先
「では!かおりさん!」
リーナが、いつになくきっぱりとした声で言った。
「はい……?」
嫌な予感が、胸の奥をよぎる。
「この麺を作る機械を、鍛治師さんと協力して――」
「何個か、作って下さい!」
「……はい?」
一拍、完全に思考が止まった。
「えー!?」
◇
「この機械は素晴らしいです」
リーナは、製麺機を軽く叩きながら続ける。
「特別な魔法も使っていない」
「構造も理解しやすい」
「職人の手で再現できる」
一つ一つ、指を折りながら。
「つまり」
「広めるのに、問題がありません」
「……はあ」
かおりは、反論の言葉を探すが、見つからない。
「急がなくても良いので」
にこり。
「宜しくお願いします!」
「……は、はっい!」
反射的に、背筋を伸ばして返事をしていた。
◇
リーナ達が帰った後。
かおりは、椅子にどさりと腰を下ろした。
「……はぁ〜……」
深く、長いため息。
「どうして、こうなった?」
誰にともなく呟く。
「私は、ただ……」
「ラーメンを食べたかっただけなのに……」
頭の中では、昨日の夜からの出来事がぐるぐる回る。
スープの匂い。人だかり。試食会。
そして、製麺機の量産指示。
「……なんか、凄く疲れた……」
肩を落とし、机に突っ伏す。
◇
それでも。
机の上に置かれた製麺機を、ちらりと見る。
「……でも」
「この世界で、麺を作る人が増えるなら」
それは、それで悪くないのかもしれない。
「……本当に、勝手に広がっていくわね」
かおりは、苦笑しながら目を閉じた。
ラーメン一杯から始まった話は、
いつの間にか、領地の新しい“技術”へ。
転がり出した麺の行き先は、もう、かおり一人では止められそうになかった。




