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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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麺と向き合う、昼の試食会

「ふーう……」


かおりは、額の汗をぬぐった。

どうにか、昼には間に合った。


「こんにちは! かおりさん!」


聞き慣れた声に振り向くと、そこにはリーナが立っていた。

後ろには、数名の側近と、興味津々といった様子の人影。


「はい……どうぞ」


少しだけ、気後れした返事になる。



机の上には、布をかけた盆がいくつも並んでいた。その布を、かおりがそっとめくる。


「これが……麺、ですか?」


リーナは目を見開いた。


「はい。色々な形があるんですね」


「ええ」


かおりは頷く。


「好みもありますし……スープに合う合わないもありますから」


「ですので、何種類か試しに作ってみました」


細麺、ちぢれ中麺、太麺。

それぞれの質感を、指先で確かめるように見つめるリーナ。


「……なるほど」


「同じ材料でも、随分印象が変わりますね」



鍋では、朝から温め直したスープが静かに湯気を立てている。

昨日から煮込まれた香りが、部屋いっぱいに広がった。


「では……」


リーナが、にこりと微笑む。


「早速、試食会と行きますか!」


「……解りました」


かおりは、深呼吸して答えた。



まずは細麺。


湯にくぐらせ、頃合いを見て引き上げる。


「……このくらい、かな」


器に盛り、スープを注ぐ。


「……っ」


自分でも、喉が鳴った。


次は、ちぢれ中麺。そして、太麺。

机の上に、三つの器が並ぶ。


「……同じ料理なのに」


誰かが、ぽつりと呟いた。


「見た目が、全然違いますね」



リーナは、まず細麺から口に運んだ。


「……!」


一瞬、目を見開き、そして――


「これは……」


「スープがよく絡みますね」


続いて、ちぢれ中麺。


「……こちらは、噛みごたえがあります」


太麺を前に、少し考えてから箸を伸ばす。


「……ふむ」


静かな時間。


やがて、リーナは顔を上げた。


「かおりさん」


「はい……」


「どれも、美味しいです」


その一言に、肩の力が抜けた。



「でも」


リーナは続ける。


「用途が違いますね」


「軽く食べたい時、しっかり食べたい時」


「……選べる」


かおりは、小さく頷いた。


「はい。それが、この料理の面白い所です」


「一つに決めなくてもいい」



昼の光が差し込む中、器は次々と空になっていく。試食会は、ただの食事ではなかった。


「……これは」


リーナは、最後にそう呟いた。


「また一つ、“広がる”予感がしますね」


かおりは、少し困ったように笑った。


「……そうですね」


昼の麺は、静かに、しかし確実に。

次の波を呼び始めていた。

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