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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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動き始めた流れ

農家と集積屋の間で、細かな調整が何度も行われた。


時間のずれ。

受け渡しの手順。

量の目安や、無理の出るポイント。


一つ一つを話し合い、

お互いに納得できる形へと擦り合わせていく。


その結果――

流れは、目に見えて変わり始めた。



以前のような慌ただしさは減り、どちらも「自分の仕事」に集中できるようになった。


農家は、畑にいる時間が明らかに増えた。


朝から畑に出て、土を見て、作物の様子を確かめる。


市場へ行くために作業を切り上げる必要がなくなり、細かな手入れまで行き届くようになった。


それだけで、作物の状態は違ってくる。



一方、集積屋の方も変化していた。


集める量が安定し、作業の流れが読めるようになったことで、新たに人を雇う余裕が生まれたのだ。


受け取り、仕分け、運搬。


役割を分けることで、一人一人の負担は軽くなり、仕事として成り立つ形が見え始めていた。



……上手く噛み合ってきた。

かおりは、その様子を見て静かに頷く。

今は、農作物だけ。


でも、この仕組みは――


他の業種にも、応用が効く。

物を作る人。集める人。運ぶ人。

その間に流れを作るだけで、無理は減り、仕事は増える。



そして、その変化を見ていたのは、かおりだけではなかった。

リーナもまた、報告を聞き、現場の様子を確かめ、何かを掴んだような表情を見せていた。数字ではなく、理屈だけでもなく。


「領地が、自然に回り始めている」


そんな手応え。



派手な改革ではない。

けれど、確実に前へ進んでいる。


かおりは思う。。これでいい急がなくていい。無理に広げなくていい。


流れは、もう動き始めているのだから。


かおりは、少し離れた場所からその様子を眺めながら、ふと思った。


……これも、前の世界では当たり前のことだった。


生産する人がいて、それを運ぶ人がいて、

まとめる人がいて、最後に売る人がいる。


役割は分かれていて、それぞれが自分の持ち場に集中していた。


この世界では――

商人が、物流も問屋も店も、全部を抱えている所が大半だ。


農家に至っては、作るだけでなく、市場で売るところまで自分でやっている。


だから、無理が出る。



今、その形が、少しずつ変わり始めている。


農家は畑に専念し、集積屋がまとめ、商人がそれを扱う。


間を挟めば、確かに価格は上がるかもしれない。


でも――


まとめる事で、逆に下がるコストもある。


移動の回数。人手の無駄。時間のロス。


それらが減れば、全体としては、軽くなる。



まだ、手探りだ。


うまく行かない所もあるし、調整が必要な部分も多い。


それでも――

慣れてしまえば、これが普通になる。

誰かが意識しなくても、自然と回る流れ。


それが「仕組み」だ。



かおりは、小さく息を吐いた。


急ぐ必要はない。

押し付けるつもりもない。


ただ、形を作って、回るかどうかを確かめるだけ。……あとは、現場が育ててくれる。


そう思いながら、かおりはまた次の調整へと向かっていった。

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