原点を思い出す
集積所の動きは、もう特別なものではなくなっていた。
農家が来て、集める人が受け取り、必要な場所へ流れていく。
誰かが声を荒げることもなく、無理をしている様子もない。
ただ、淡々と回っている。
◇
その様子を少し離れた場所から眺めながら、
かおりは思った。
……物を造るのも、大事だけど、道具があれば楽になる。確かにそれは間違いじゃない。
でも、それだけじゃない。
仕組みを作るのも、同じくらい大事ね!
◇
農家は農作物を作ることに集中できる。
集積する人は、それをまとめることに集中できる。
そして、その間に立つ人にも仕事が生まれた。
誰かが楽になり、誰かに役目が生まれる。
無理に押し付けたわけでも、急に世界を変えたわけでもない。
◇
これなら……
かおりは静かに息を吐く。
急に、この世界を変える事にはならない!
自分にできる事は限られている。
全部を抱え込むことなんて出来ない。
でも――
1人で抱える必要は、なかったのよね。
◇
思い返せば、ずっとそうだった。
悩んだら相談して、考えて、決める。
それだけで、随分と楽になる。
自分が前に出なくてもいい。
全部を決めなくてもいい。
私は、そのお手伝いが出来ればいい。
◇
ふと、昔の記憶が蘇る。
まだ前の世界で、誰かの間に立って、話を聞いて、整理していた頃。
目立たなくて、評価されることも少なかったけれど――
それでも、嫌いじゃなかった。
◇
……そうか。かおりは、少しだけ笑った。
それが好きだったから、この仕事を引き継いだんだ。
ずっと前の事だったから、忘れていただけ。
物を作る前に、人の話を聞いていた自分。
流れを整える事に、やりがいを感じていた自分。
◇
私の原点は、そこだったんだ!
胸の奥が、すっと落ち着く。
派手な事は出来ない。
世界を変える英雄でもない。
でも――
人と人の間を、少しだけ整える。
それなら、これからも続けられる。
◇
かおりは、集積所から目を離し、歩き出した。
次にやるべき事は、もう見えている。
物か、仕組みか。
その答えは一つじゃない。
必要な方を、必要な分だけ。
それを、皆と一緒に決めていけばいい。




