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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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間に立つ人

集積所の朝は、相変わらず早い。


だが最近は、扉が開く前から誰かが居るようになった。



「今日は、この辺りから先に来るはずです」


そう言って帳面を開いているのは、若い男だった。農家でもなく、商人でもない。


「昨日の時点で連絡があってな」


「量が少し増えるって」



周囲の者たちは、それを特別に思わなかった。


「じゃあ、こっちを空けておくか」


「了解」


会話は短く、迷いがない。



彼は“間に立つ人”だった。


農家の声を聞き、集積側の都合を知り、その両方を行き来する役目。



以前なら、そんな立場は曖昧だった。


誰かが気を利かせて動き、誰かが我慢して飲み込む。だが今は違う。


「それは無理だ」


「それなら調整しよう」


そう言える人間が、真ん中に居る。



リーナとかおりは、少し離れた場所でその様子を見ていた。


「もう、自然ですね」


かおりが言う。


「ええ」


リーナは静かに頷く。


「最初は、反発もあると思っていました」



確かに、最初は戸惑いもあった。


「何であいつに言わなきゃならん」


「今まで通りでいいだろう」


そんな声もあった。


だが、続かなかった。


理由は単純だ。楽だったから。



直接ぶつからなくていい。

その場で決めなくていい。

一度、間に預ければいい。



「今日は遅れるそうです」


その一言で、皆が動く。


「じゃあ後回しだな」


「別のを先にやろう」


誰も責めない。



「……仕事って、不思議ですね」


かおりがぽつりと呟く。


「はい?」


「誰かがやってる時は見えないのに、居なくなると、すごく困る」



リーナは、少し考えてから答えた。


「だからこそ、役目にするのです。名前を付けて、責任を持たせてその代わり、ちゃんと認める」


間に立つ人は、前に出ない。

命令もしない。決定もしない。

ただ、伝える。揃える。整える。


それでも、その存在があるだけで流れは変わる。


農家は、作ることに集中できる。

集積は、捌くことに集中できる。



夕方。


帳面を閉じた男が、深く息を吐いた。


「今日は、問題なしです」


それを聞いた周囲が、自然と頷く。


「お疲れ」


「助かった」


その言葉は、大げさではなかった。


かおりは思う。

道具を作った時と同じだ。


誰かの負担を、少しだけ軽くする。

それを形にする。


今回は、物ではなく人だっただけ。


「……これなら」


かおりは、心の中で続ける。


「次の段階も、考えられる」


仕組みは、もう動き始めている。

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