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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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現場から上がる声

数日が経った。


最初のぎこちなさは、まだ完全には消えていない。

だが、確実に「慣れ」が生まれ始めていた。



集積所の端で、数人の農家が立ち話をしている。


「正直な話さ……」


年配の農家が、籠を置きながら言った。


「前より楽だ」


周囲が、小さく頷く。


「市場まで行かなくていい分、畑に戻れる時間が増えた」


「昼のバタバタが減った」


誰も大声では言わない。だが、確かな実感があった。



一方で、声はそれだけではなかった。


「ただな……」


別の農家が、少し困った顔をする。


「この時間帯、重なるときがある」


「雨の日は、予定通りに動けねえ」


集積側も、同じだった。


「受け取りは楽になったけど」


「量の見込みがズレる日がある」



それらの声は、そのままリーナとかおりの元へ集められた。


書き留められた紙には、短い言葉が並ぶ。


・時間帯の微調整

・天候時の例外対応

・量が多い日の連絡方法


「……文句じゃないわね」


リーナが言う。


「はい」


かおりも頷いた。


「どうしたら回るか、を考えてくれてます」



かおりは、少し不思議な気持ちになっていた。


以前なら――

新しい仕組みは「上から決められたもの」だったはずだ。


だが今は違う。


「こうしたらどうだ?」


「次はこうしてみないか?」


そんな声が、自然に出ている。



集積者の一人が言った。


「毎日同じじゃなくていいなら」


「曜日で少し時間を変えてもいいかもしれない」


農家が応じる。


「それなら、こっちも調整できる」



話し合いは、短かった。


結論を出すことより、「話せる」こと自体が目的になっている。



その日の終わり。


かおりは、帳面を閉じながら小さく息を吐いた。


「……これ、もう私たちが引っ張らなくても」


「ええ」


リーナも、同じことを感じていた。


「動き始めたわね。現場が」



完璧な仕組みではない。


だが、誰かが我慢する形でもなく、誰かが得をしすぎる形でもない。


「調整すること」が、仕事として認識され始めていた。



リーナは、静かに決める。


「次は――」


「はい」


「この声を前提に、形を一段進めましょう」


かおりは、少しだけ笑った。


仕組みは、押し付けるものじゃない。


現場から上がる声が、それを“育てていく”。

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