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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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最初の違和感と小さな成功

最初の日は、静かに始まった。


特別な合図もなく、鐘が鳴るわけでもない。

ただ、決めた時間に、決めた人たちが動き出す。



「……少し、早いな」


農家の一人が、荷を積んだ籠を下ろしながら呟いた。


今までは、収穫したらすぐ市場へ向かっていた。今日は集積所に持ち込む。

頭では分かっていても、身体が慣れていない。


「待たせてしまうかもしれない」


そんな遠慮が、まだ残っていた。



一方、集積側も同じだった。


「思ったより来るな」


帳面を確認しながら、集積者が首を傾げる。


今までは午後に集中していた荷が、今日はぽつぽつと、時間を分けて届く。


「……でも、これは」


誰かが気づいた。


「一気に来ない分、慌てなくていい」



昼を少し過ぎた頃。


予定していた「重なる時間帯」が、静かに機能し始めた。


農家は、

「この時間までに持ってくればいい」と分かっている。


集積側は、

「この時間は受け取る」と決めている。


誰も声を荒げず、誰も急かさず。



もちろん、問題は出た。


「今日は遅れたら、受け取ってもらえないのか?」


「急な雨の時はどうする?」


そんな声が、すぐに上がる。


だがそれは、拒否ではなかった。


「続ける前提」の質問だった。



夕方。


リーナとかおりは、集積所の端で様子を見ていた。


「……どう思う?」


リーナが小声で尋ねる。


「正直、まだぎこちないです」


かおりは即答した。


「でも」


一呼吸置いて、続ける。


「前より、空気が軽い」



実際、農家たちの表情は違っていた。


疲れてはいるが、焦ってはいない。


集積者も同じだ。


「今日は、仕事を“回した”感じがする」


そんな言葉が、ぽろりと零れる。



「成功、と言うには早いわね」


リーナは言った。


「はい。でも――」


かおりは、集積所を見渡す。


「失敗、ではありません」



完璧ではない。遅れる人もいる。戸惑う人もいる。


それでも、


「話せば直せる」


「次はこうしよう」


その言葉が、自然に出てきている。



その夜、簡単な報告が上がった。


大きな混乱なし。

作業時間の極端な増減なし。

不満はあるが、怒りはない。


リーナは、その紙を見て静かに頷いた。


「……小さいけれど」


「はい」


「確かに、進んでいるわね」



かおりは、少しだけ肩の力を抜いた。


仕組みは、まだ粗い。だが、流れは生まれた。


そして何より――


「合わせる」のではなく、「話しながら整える」


その感覚が、現場に芽生え始めていた。

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