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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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数字に出ない違和感

報告は、簡潔だった。


「農家の人たちは、概ね助かっているそうです」


かおりはそう切り出し、用意してきたメモを机に置いた。


「市場へ運ばなくていい」


「売れ残りを気にしなくていい」


「作ることに集中できる」


「表向きは、かなり好評です」


リーナは静かに頷いた。


「……“表向きは”、ですね」


「はい」


かおりも、その言葉を否定しなかった。



「不満が出ているわけではありません」


「でも……」


かおりは言葉を選ぶ。


「皆さん、“様子を見ている”感じです」


「様子見?」


「はい。反対ではないけれど、完全に納得しているわけでもない」


リーナは、指先で机を軽く叩いた。


「理由は?」


「一番多かったのは……」


かおりは少し間を置いてから言った。


「売っている実感が薄れた、という声です」



その瞬間、リーナの中で何かが噛み合った。


「……数字は、出ていますよね」


「はい。集荷量も、支払いも、想定通りです」


帳簿上、問題はない。むしろ効率は上がっている。


「でも」


リーナは、窓の外を見た。


「“感覚”が、追いついていない」


「そうです」


かおりは小さく頷く。



「農家の方々は、これまで」


リーナは、言葉を整理するように続けた。


「作る」「運ぶ」「売る」


「この三つを、自分の手でやっていた」


「はい」


「それが今は、“売る”が見えない」


「ええ」


リーナは、息を吐いた。


「数字には出ない。でも……時間の使い方と、気持ちの置き場が変わっている」



「不安、というほど強くはない」


「でも、“任せている”という感覚が、少し落ち着かない」


「……そういうことですね」


かおりは、農家の表情を思い出す。


楽になった、と笑いながら。

それでも、どこか探るような目。



「これは、失敗ではありません」


リーナは、はっきり言った。


「むしろ、想定内です」


「想定内……ですか?」


「ええ」


リーナは、書類の端に小さく線を引いた。


「仕組みを変えれば、必ず“感覚のズレ”が生まれます」


「今回は、それが“売る実感”だっただけ」



「問題は」


リーナは顔を上げ、かおりを見る。


「このズレを、放置するか、埋めるか」


かおりは、少しだけ表情を引き締めた。


「……埋める、ですよね」


「当然です」


リーナは微笑んだ。


「農家の方々は、不安を声にしていません」


「だからこそ、こちらが気づかなければならない」



「方法は、いくつか考えられます」


リーナは、静かに言った。


「情報を返す」


「流れを見せる」


「成果を“見える形”にする」


「売っている実感を、別の形で取り戻してもらう」


かおりの目が、少しだけ輝いた。


「……なるほど」



「次は」


リーナは、椅子から立ち上がる。


「“中間を作った責任”を、こちらが果たす段階ですね」


「仕組みを作ったら、終わりではない」


「その先まで、面倒を見る」


かおりは、深く頷いた。


「はい。私も、協力します」



数字は、正しい。仕組みも、間違っていない。だからこそ。


“人の感覚”という、帳簿に書けない部分に、

リーナは最初の修正点を見つけたのだった。

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