広がる手応え、次を描く休息
大きな仕事が一段落し、
かおりは久しぶりに、はっきりと「休み」と呼べる時間を取っていた。
作業場の喧騒から少し離れた場所で、温い飲み物を手に、静かに息を吐く。
「……終わった、か」
荷馬車の件。
領内向け、領外向け、どちらも流れに乗った。
◇
これで、流通はかなり改善されるはずだ。
運ぶ量は増え、一度に動く距離も伸びる。
何より――領外から来る商人たちが、この領地で作られた道具を持ち帰ってくれる。
「勝手に、広げてくれるのよね」
商人は、使える物しか扱わない。
使えた道具は、別の商人の目に留まり、また別の土地へと運ばれていく。
口コミで広がり、評判が積み上がり、仕事が、自然と運び込まれる。
◇
かおりは、その流れを頭の中でなぞった。
自分が前に出なくても、売り込みをしなくても、道具が、仕事を呼んでくる。
「……いい循環」
これは、かおりが最初に思い描いていた形に、かなり近い。
◇
だからこそ――次を考え始めていた。
「次は……何を作ろうかな」
既にある物を、少し良くする。
過激じゃない。魔法も使わない。
でも、確実に“楽になる”物。
運ぶ道具は、一通り揃った。
ならば、その次。
「……扱う、か」
「……守る、か」
道具は、まだまだある。
◇
かおりは、ふっと笑った。
焦る必要はない。急ぐ理由も、もうない。
流れは出来ている。支える人も、育っている。
「ゆっくりで、いい」
休息の時間は短かったが、その分、頭の中は静かに、確かに動き続けていた。
次の一手を、領地の未来に、無理なく置くために。




