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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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外から伸びる手、内で積み上がる土台

この荷馬車に、最初に目をつけたのは――

領外からやって来ていた商人たちだった。


「……これ、売り物か?」


実物を前にした商人の目は、隠しようもなく輝いていた。


荷台の大きさ。足回りの頑丈さ。無駄のない構造。どれも、彼らが日々扱っている“運ぶ”という仕事に直結している。



商人たちは迷わなかった。


「次に来る時までに、用意してもらえるか?」


「数は……まずは、これくらいで」


具体的な数字が、その場で出る。


今までの道具、運搬具、そして小型の荷車。

それらが確実に役に立った実績が、判断を早くしていた。


「ただし、すぐには無理だろ?」


かおりは、正直に頷いた。


「物が大きいですから。時間は、ください」


「構わん。次の往復までにあれば十分だ」


そう言って、商人は続ける。


「今まで使っていた荷馬車は、こちらで引き取ってくれるんだろ?」


「はい。回収して、こちらで改修します」


それを聞いて、商人は満足そうに笑った。



話は、すぐにリーナの元へと共有された。


「……想定通り、外が食いついてきましたね」


「ええ。だからこそ、人手が足りません」


リーナは、すぐに動いた。


「補佐を、さらに募集します」


領内だけでなく、領境にも声をかける。

働き手を探している者は、少なくない。


「仕事は増える。だが、安定もする」


その言葉は、確かな重みを持っていた。



一方、領内では――


住宅の建設が、変わらず続いていた。


家が増え、人が住み、道具が使われる。


外へ向けた生産が始まっても、内側の整備は止めない。それが、この領地の方針だった。


「外に売る前に、内を整える」


誰かが言い出したわけではない。

だが、いつの間にか、それが当たり前になっていた。



荷馬車の生産は、すぐに工程表が引かれた。


「ここまでは、これまでと同じ」


「ここからは、人数を増やして」


職人たちが自然に役割を分ける。


新しく入ってきた者には、補助的な作業を。

慣れた者が、要となる部分を。


流れは、すでに出来上がっていた。



かおりは、その様子を少し離れた場所から眺めていた。


「……大丈夫そうね」


自分が前に出なくても、回っている。


外からは注文が入り、内では家が建ち、人が増え、仕事が回る。


「ちゃんと、“領地”になってきた」


荷馬車は、ただの道具だ。だが、それをきっかけに――


外と内が、確かにつながり始めていた。

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