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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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積み重ねた日数の重さ

今回の荷馬車は、完成までに数十日を要した。


「……やっと、だね」


かおりは、完成した試作品を前にして、静かに息を吐いた。


今まで作ってきた道具とは、明らかに違う。

大きさも、重量も、かかる負荷も段違いだった。


だからこそ――

一気に作り上げる、という選択は最初からなかった。



制作は、段階的に進められた。

ある程度形になった時点で、一度使ってもらう。実際に荷を積み、引かせ、曲がらせ、止める。


「ここ、少し重いな」


「段差で軸が沈む感じがする」


「方向転換がきつい」


出てきた意見を、その場で記録する。

そして、作業場に戻って改修。


「ここは厚くしすぎたわね」


「逆に、ここは補強が足りない」


直しては、また使ってもらう。その繰り返しだった。



途中の試作品は、もはや「未完成品」ではなかった。だが、かおりはそこで止めなかった。


「まだ、直せる」


一つ直すと、別の部分が見えてくる。

負荷の逃げ方、重心の位置、引く側の負担。


「大きな道具ほど、誤魔化しが効かない」


そう実感する日々だった。



完成した荷馬車は、最初の案とは少し違う姿になっていた。無駄な装飾は一切ない。

だが、どこもかしこも、意味のある形をしている。


「壊れにくくて」


「直しやすくて」


「誰でも使える」


その条件を、すべて満たしていた。



領内での最終確認。


実際の運搬に使ってもらう。

重い荷を積み、長い距離を移動する。


数日が経っても――


「特に、不満はないな」


「前より楽だ」


「これなら長く使える」


出てくるのは、そんな声ばかりだった。


変更点も、追加の要望も出てこない。


「……合格、ね」


かおりは、そう呟いた。



判断は早かった。


「生産を始めましょう」


試作段階は、ここで終わり。ここからは、量を作る段階だ。職人たちも頷く。


「型は、これで決まりだな」


「部材の準備に入ろう」


これまでの成功パターンが、ここでも生きていた。



こうして。


時間と手間を惜しまず積み重ねた荷馬車は、正式に生産へと移った。

一気に広げるのではない。だが、確実に。


それは、領地の中だけでなく――

その先へと物を運ぶための、確かな足となる。


数十日分の試行錯誤は、確かに、この形の中に残っていた。

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