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倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


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次に動かすもの

かおりは、作業場の隅で腕を組み、少しだけ遠くを見ていた。

頭の中に浮かんでいるのは、これまで作ってきた道具とは比べものにならない存在だ。


「……次は、これよね」


馬や牛が引く、荷馬車。


人の手で押す、引く。そこから一段、規模が上がる。これまで作ってきた運搬道具の延長線上ではある。

だが、大きさも、重量も、かかる力もまるで違う。


「今までで、一番大きいわ」


それだけで、簡単ではないと分かる。



作り始める決断は、早かった。

躊躇はしない。ただし、楽観もしない。


「これは……時間が掛かる」


材料の量。加工の手間。そして、試作と改良。どれを取っても、今までの比ではない。


「焦らない事が大事ね」


かおりは、そう自分に言い聞かせた。



まず手を付けたのは、足回りだった。


「ここが全部を支える」


車輪。車軸。地面との接点。

少しでも弱ければ、全体が台無しになる。


「頑丈で、シンプル」


口に出すのは簡単だ。だが、実際に形にするとなると、話は別だ。


「強くしすぎると、重くなる」


「軽くすると、耐久が落ちる」


その間で、答えを探す。



木材の選定から始まる。硬すぎると割れやすい。柔らかすぎると歪む。


「……これね」


何度も触り、叩き、目で確かめる。


鍛冶士と話し合い、金具の形も最小限に抑える。補強は必要だが、増やしすぎない。


「壊れた時に、直せる事も大事」


ここが、重要だった。


特別な技術がなければ直せない物は、使い続けられない。



試作の車輪が、地面に置かれる。


ごろり、と転がす。


「……悪くない」


だが、満足はしない。


「まだ、足りない」


段差。石。ぬかるみ。


想定できる地形を、一つ一つ思い浮かべる。


「ここを越えられないと意味がない」



かおりは、深く息を吸った。


「大丈夫。今までやってきた事の、延長よ」


無理な事はしていない。魔法も、奇抜な発想も使っていない。必要なのは、手間と時間と、確認。


「じっくり、やろう」


周囲の職人たちも、その空気を感じ取っていた。


「今回は、時間掛かりそうだな」


「だが、やりがいはある」


誰も、急かさない。



こうして。


領地で最も大きな道具になるであろう、荷馬車の試作が始まった。それは、ただ物を運ぶための物ではない。

この領地が、さらに外へと繋がるための――

大きな、一歩だった。

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