表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉庫ごと異世界転移したので、何でも屋を始めます  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/161

回り始めた歯車

一度、流れが出来てしまうと。

後は、驚くほど自然に回り始める。


かおりは、その様子を少し不思議な気持ちで眺めていた。



新しい運搬道具の実験は、数日かけて行われた。


手押し車。手引き車。


最初は、ほんの小さな違和感から始まる。


「ここ、少し持ちにくい」


「段差で引っかかるな」


「重心が前に寄りすぎかも」


使う人が違えば、出てくる声も違う。


若い男性。女性。年配の作業者。


その全てを拾い上げ、職人たちは黙々と手を動かした。


削る。補強する。角度を変える。


大きな変更は少ない。

だが、小さな修正が積み重なっていく。


そして――


「これだな」


誰かがそう言った時、全員が頷いた。


最終の型。



そこからは、早かった。


量産化の指示が出ると、木工師と鍛冶士が一斉に動き出す。

補佐として集められた人員も、手際よく配置される。


材料の運搬。組み立て補助。仕上げ確認。


誰が何をすればいいか、もう説明はいらなかった。


「前と同じ流れだな」


「覚えてるぞ」


成功体験は、確実に残っていた。



完成した道具は、あっという間に領内へと広がっていった。


畑で。倉庫で。建築現場で。


「楽だな、これ」


「腰が全然違う」


「一人で運べる量が増えた」


使い手の表情が、はっきりと変わる。


そして同時に。


「前の道具、持ってきたぞ」


今まで使われていた運搬道具が、次々と回収されていった。



回収された道具は、捨てられない。


リーナの指示で、再び職人の元へ運ばれる。


「ここを直せば、まだ使える」


「強度を上げて、形を変えよう」


領内向けではない。領外向けだ。


改造され、整えられた道具は、外から来た商人たちの手に渡る。


「前より、ずっと使いやすいな」


「これなら、また欲しくなる」


そんな声が増え始めた。



気が付けば。


領内向けの製造と、領外向けの製造。

二つの流れが、同時に動いていた。


「忙しくなったな」


「でも、いい忙しさだ」


職人たちの顔に、疲労と同時に充実が浮かぶ。


リーナが補佐を募集したタイミングは、まさに最適だった。


人が足りない、という事態にはならなかった。



仕事が増えれば、次に繋がる。


領境で保護されていた人々にも、少しずつ声が掛かるようになった。


「手伝ってみないか」


「簡単な作業からでいい」


いきなり重い責任は渡さない。まずは、関われる場所を作る。


「……やってみます」


そう答える声が、少しずつ増えていく。



急激ではない。劇的でもない。


だが、確かに。ゆっくりと、少しずつ。

この領地は、回り始めていた。

かおりは、その流れの中に立ち、静かに息をつく。


「……よかった」


無理に引っ張らなくてもいい。押し付けなくてもいい。


一度整えた歯車は、自分たちの力で回っていく。


その事実が、何より嬉しかった。


静かに、確実に。

この場所は、前へ進んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ