第42話『神殿への階段、命を懸けた問い』
「この階段……終わりが見えないな」
浮遊する石段を一歩ずつ進みながら、俺――ヨシオは思わずつぶやいた。見下ろせば青い霧に包まれ、足場の下は虚空のよう。高所恐怖症だったら泣いてるレベルだ。
「足元に気をつけて。魔力のバランスが崩れたら、簡単に落ちるわよ」
エリュが軽やかに言う。やはりこの人はただ者じゃない。
「だがよ、ここを登れば本当に“真実”に辿り着けるのか?」
ウケールが眉をしかめながらも前進する。幻影の試練のあとから、どこか真剣な顔になっている。見直したぜ。
リリィは黙って俺のそばを歩いていた。いつも元気で冗談ばっかり言ってるくせに、こういう時は妙に静かになる。まるで俺の手を取るように、視線を合わせてくる。
「ヨシオ、怖くないの?」
「いや……まあ、ちょっとビビってるけど。リリィがいるから、俺はなんとかなる気がする」
「そっか……ふふ、じゃあ私もがんばろっ!」
その笑顔に救われた。そういうの、ずるいよな。
やがて、霧が晴れ、石造りの広間が現れる。天井のない空間に、銀色の円盤が浮かび、中心には巨大な水晶柱。その前には――
「来たな、選ばれし者たちよ」
声が響いた。
姿を現したのは、全身を漆黒のローブで包んだ男。顔は仮面に隠されている。だが、その背後には何百もの魔法陣が浮かび上がっていた。
「……やばくね?」
「ちょっと、強そうってレベルじゃないわね」
「試練の最終関門、“神域の番人”……そう名乗るといい」
仮面の男が手をかざすと、俺たちの目の前に五つの紋章が浮かび上がる。それぞれ、別の色で輝いていた。
「お前たちが通るには、“誓いの印”を選ばねばならぬ。それは魂の契約だ。一つでも嘘があれば、お前たちはここで消える」
「……マジで試されてんのか、俺たち……」
ウケールが身構える。だが、今さら引けない。
「わたし、これにする!」
リリィが真っ先に青い紋章に手を伸ばす。たちまち彼女の身体が光に包まれ、浮かび上がった。
「“愛する者を信じる”誓い、確かに受理した」
「次は俺だ」
俺は迷わず、緋色の紋章を選んだ。触れた瞬間、心の中に声が響く。
『――力を欲するか? それは、何のために?』
「仲間を守るためだ。それ以外の理由はいらない」
その答えに、光が収束する。
「“力を正しく使う”誓い、受理された」
他の仲間もそれぞれ紋章を選び、誓いを立てていく。そして、五つすべての契約が済んだ瞬間――
「ならば、最後の問いを与えよう」
仮面の男の背後に、巨大な魔法陣が展開される。
「――お前たちは、何をもって“真理”と定義する?」
沈黙。
全員が、言葉を失った。
「……え、そういうの、哲学の時間にやるやつじゃね?」
「難しすぎるだろ!! バトルしろよ!!」
「こらヨシオ、バカなこと言わないで! これはたぶん本気で答えないとダメなやつよ!」
「う、うん……」
だが、俺は一歩踏み出して言った。
「真理ってのは、たぶん“諦めなかった結果”だと思う。どれだけ失敗しても、仲間が傷ついても、自分を信じて進み続けて――それで、やっと辿り着けるものだ」
沈黙が走る。
仮面の男が、動きを止めた。
「……面白い。ならば、その言葉の重さを――証明してみせよ」
次の瞬間、魔法陣が一斉に発動し、空間が歪んだ。
そして――
巨大な、光の獣が現れた。
「よし、みんな! 一緒に行こう! これが……俺たちの最後の試練だ!」
「面白かった!」
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