第100話『静けさの祝宴、夜明けの誓い』
迷宮からの帰還は、傷だらけだったが、どこか清々しさがあった。
仲間の死という重い現実を抱えながらも、俺たちは、それでも生きて前を向かなければならないと、心の底から思えた。
ギルドに帰ると、珍しくリリィが先に口を開いた。
「……今日は、少し、休もうよ。ね?」
「賛成だな」エリュが頷く。「休息も、戦いには必要だから」
ウケールも軽く手をあげて、「おうよ!じゃあ、宿屋で祝杯といこうぜ!」
俺たちは、町のはずれにある温泉宿に身を預けることにした。
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湯けむりの中、疲れた身体を癒しながら、俺は何も考えずに空を見上げた。天井のない風呂は久しぶりだった。
すると隣から、声がする。
「……ヨシオ、少し、いい?」
振り返ると、浴衣姿のリリィが、湯気の向こうからそっと近づいてきた。
「なんだよ。まだ怒ってるのか?」
「違う……怒ってなんか、ない。ただ……」
リリィは目を伏せて、ぽつりと言った。
「私、怖かったの。……ヨシオが、エリュを助けに行くって言ったとき、心の奥で、少し……嫉妬してた」
「嫉妬……?」
「うん。バカみたいでしょ。私たち、仲間なのに……でも、どうしても苦しくて。だから今、ちゃんと言いたくて」
リリィは小さな声で、俺の手をそっと握った。
「私は……ヨシオの隣にいたい」
心臓が跳ねた。
いつも陽気で明るくて、みんなを引っ張る彼女の、こんな弱い表情を初めて見た。
「……俺も、おまえのこと、ずっと気になってた」
リリィの目が見開かれる。次の瞬間、そっと身体を寄せられて、彼女の温もりが背中に伝わった。
「……じゃあ、今夜は、そばにいて」
「……ああ」
静かな湯けむりの中で、二人の距離は、もう言葉はいらなかった。
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その翌朝。
宿の広間で、ウケールが目をキラキラさせて俺たちを見ていた。
「……なんだよ?」
「いやあ……ふたりの雰囲気が、変わったなぁと思ってさ!」
「……気のせいだろ」
「はいはい、気のせい気のせい♪」
その隣で、エリュが静かに微笑んでいた。昨日のことを、まだ引きずっているかもしれない。でも、その目にはもう、迷いはなかった。
そして、俺たちはまた、次のクエストへ向けて歩き出す。
仲間の死という悲しみを超えて――それでも、この旅は続く。
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