第180章 青春の始まり?
「(青春? なにそれ、うっざ。1年を通して他人と3年の月日を共に感じる? なんで? 気持ちか悪い。 はあぁ~早く、世界滅亡しないから)」
火岩川花柏は窓際の近くの机に座り窓の外を眺めながらそう思った。
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東京の中でも田舎に近い場所・育間市にある高校。『私立喜明高等学校』。
どこにでもある普通の高校である。
5月24日月曜ー。
いつものホームルームがが始まる。そう思いながら火岩川は退屈な日々を送る事に飽き飽きしていた。
1年B組の教師の高倉光昭が仏頂面な態度で首を掻きながらダルそうに話し始める。
火岩川は知っている。いや、生徒たちは知っている。この教師が彼らを見る目はゴミを見るような目だという事を。ただただ、高倉は仕事をするだけ機械人間だということを。
何があっても生徒の為に何かするような奴ではない。そんな事、全生徒が知っている高倉もそれを自覚しているしそう言った行動をしている。
「(コイツの喋りはマジでうざい。私らを見るその目もうざい。マジで死ねよ)」
アニメや漫画で言う主人公のポジションというには少し前より縦6列の横6列。計32人の生徒が座れる。
だが32人生徒はいない。29人しかいないのが1年B組の教室である。
火岩川は小さくため息を吐いてすぐに窓の外を見る。
4階建ての3階のその教室から見える景色はすら覚えられるほど毎日同じ景色。
工場から出る車は同じ時間に同じ動きをする。その近くのコンビニの定員も同じく、決められた動きをする。
そんな退屈な日々が火岩川にとっても、そしてそのクラスの生徒たち、教師含めて、皆がその変わり映えしない日常が一変することになる。
「あ~。そうだ。忘れてた」
高倉のダルそうな声のキーを一段上げた感じで思い出した感じで話を続ける。
「言い忘れてた、今日は転校生が来ている。お~い入ってきなさい」
火岩川を含め教室の前のドアを見る。その教室のドアはスライド式のドアで人の顔のぐらいの場所に雲硝子がある。その雲硝子には人影がなく、そこ誰かが立っているという気配がない。
皆が高倉の方を見る。高倉もドアを見つめる。
「おい、転校生…。転校生? おい!!」
高倉は怒鳴るような口調になり少しイラつきながらドアの方へ歩き出してドアを横に開ける。
廊下を確認するがそこには転校生はいなかった。
「はっ? アイツどこいった? 待ってろって言ったのによ~」
高倉が珍しく焦っているのを見てクラスの生徒はくすくすと笑ったり話したりとしている。
勿論、そんな状況は火岩川も少しだけだが笑わずにはいなかった。
「(何はあいつ、焦ってん? ウケだわ)」
高倉は生徒たちに『少し待ってろ。戻ってくるまで実習してろ』と言って教室を出た。
「(転校生か……。面白い奴ならいいな~)」
そんな事を思いながら火岩川は窓の外を眺めていた時だった、目の前で黒い大きな影が下に落ちたのだ。
思わず声を出してしまった火岩川はすぐに回りを見渡した。
「なんだよ? どうした花柏」
火岩川の斜め後ろの席の坂本裕也が心配した感じで言った。
「え! 今……。」
火岩川は恐る恐る、窓の方を指を差す。
坂本は首を傾げながら窓の外を見たが何もなかった。
「見てなかった? なんかさっき!!」
「わかったから」
坂本は窓を開けて左右を見た後、下を見る。
「なんだ?」
坂本のその言葉で火岩川も下を除く。そこには一人の火岩川に取って見知った女子生徒と知らない女子生徒がいた。
見知った女子生徒をお姫様抱っこするように知らない女子生徒が抱えていた。
「だれ? てか、まさか!!」
火岩川は恐ろしい考えをしてそれを声に出した。
「飛び降り?」
ボソッと言った火岩川が言った言葉をオウム返しを大きな声でしてしまう坂本。
その声でクラスの生徒はみな窓の外を見る。
その中の大塚茉日が下にいる女子生徒に声を掛ける。
「お~い! お前何してだよ!」
偉うな口調で大塚は声を掛ける。
下にいた女子生徒はこちらに気が付き見上げた。その瞬間、皆が見とれてしまったのだ。
太陽の光が窓柄に反射して見知らぬ女子生徒の映し出した。
その美しい顔とジト目の中に光る綺麗な青い目。
火岩川の中で何かが変わる様な胸を驚かした。
「てか、あいつら抱えてるのって川崎則子じゃないか?」
そう言ったのは長内啓介。大塚の彼氏である。
皆が下を覗いていると高倉が戻ってきて怒鳴る。
「お前ら何やってんだ!!」
大塚は高倉に窓の下にいる見知らぬ女子生徒の方に指を差して言う。
「先生、もしかしてアイツが転校生?」
「はあ!?」
眉間にシワを寄せて窓の方へと歩き始め、下の方を見る。
「あ!! 転校生!! なんだ、これはどういう状況だ!!」
「もしかして川崎が飛び降りた? なにそれ面白!」
大塚は体をクネクネと動かしながら笑う。その近くにいた同じクラスメイトは愛想笑いをする。
そんなのを無視して高倉は下にいる女子生徒に声を掛ける。
「おい!!お前!!」
その女子生徒はどこかへと歩き始めた。
「おい、待て!」
高倉はまた教室へと出ていく。静かになった教室に最初に声を出したのは大塚だった。
「待って、どうしたの? マジでウケウケじゃない? だってさぁ~アイツマジで飛び降りたんだよ。やるんだったら声掛けろよ」
大塚は最初は馴れ馴れしい口調から強い口調へと変えて言った後、ニッコリスマイルで彼氏の長内の腕を掴んで甘える。
火岩川は混乱しながらもその見知らぬ女子生徒を横目で見る。
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保健室ー。
高倉は棒付きの飴玉を咥えながら近くのごみ箱を蹴り上げる。
「おい!! お前、何してんのか解ってんのか!」
高倉の前のいるのは見知らぬ女子生徒であり、転校生の勇者・リリネッドだった。
「うっえぇ! 散らかったよ。物に当たっちゃ駄目だよ」
そう言いながらリリネッドはゴミを拾い始めるが高倉は顔に手を置いて困り果てながら近くの回る椅子に腰を下ろす。
「何があったか説明できるか?」
「この人が高い場所から飛び降りたから受け止めた」
「それはもういい。だいたいわかる。俺が言っているのはなんで、お前は外にいたんだよ?」
「ん? なんか気になって」
「何が?」
「この子」
ベッドの上で眠る飛び降りたであろう子に指を差すリリネッド。
リリネッド、高倉が教室に向かう前に飛び降りをした子が屋上に向かうのを目撃していたのだ。
その時の表情が気になったリリネッドは勝手に動き。行き方もわからず走ったが迷い、とりあえず外に出たと頃に彼女がジャンプしたのだ。
「兎に角、教室に行くぞ」
「でもこの子をみないと」
「それは他の先生がどうにかすることだ。お前はまだクラスメイトに挨拶をしていない。お前は役割をしっかりしろ!」
「役割?」
「もういいから、来い!」
高倉は咥えていた棒付きの飴玉を歯で砕いて棒をゴミ箱に捨てる。
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高倉は教室に入って仕切りなおす。
「ま~いろいろあったが、転校生だ。名前を言え」
リリネッドは黒板の前に立ち教室の中の生徒を見渡す。
「おい、名前」
「あっ、えっと~…なんだっけ?」
困り果てるリリネッドに高倉は頬を人差し指で掻いてから、名簿を確認した後、黒板に名前を書き始める。
カッ、カッとチョークの音が鳴り響く。
奇妙な空気が流れる中、リリネッドは他人事の様に教室の天井にある反響音の効果が有るとされている小さな穴を数えていた。
高倉はリリネッドの名前を書き終えてから教卓に全身を預ける姿勢でリリネッドの名前を呼び上げる。
「転校生の名前は…月夢李彩さんだ。みんな、仲良くしろよ」
白いシャツに蝶結びの赤いリボンに灰色のベスト、チェックスカート、黒いスクールソックス。
何処からどう見ても女子高生になったリリネッドは月夢李彩という偽名で高校生活を送る事になってしまったのだった。
なんで?




