第159章 豊麗の愛
クロウがヴォワゴレレとの戦闘をしている間、リリネッドはステンバーに襲われていた。
「も~~やだあ!」
逃げながら何本も襲ってくる木の根をへっせらこっせらとジブリのコメディ風に避けていく。
時には避けられない物は剣で斬ったり、振り回したり、剣のグリップ部分に魔力の糸の様の物を繋ぎ鞭の様に使っていく。
意外と苦戦していたステンバーは追っている時から脳裏に走る映像で頭を抑える。
「なんだ、前にもこんな事が!? いや、まあいい。さっさと捕まえる」
地面から太い角材の形のが生えてその上に乗って角材を伸ばしてリリネッドを追う。
かなり距離が取れたリリネッドは安心して曲がり角の所で壁に背を寄りかかりしゃがみ込む。
「疲れた……何?」
ドバン、ガダンと音がして走って来た方を見ると角材に乗りながら双剣で回りを攻撃しいくステンバーが向かって来ていた。
小さいため息をしてから立ち上がって覚悟を決めたリリネッドは剣をしっかり握りステンバーの前に立つ。
「どうした? 鬼ごっこは終わりか?」
「アイランさん、本当に何も覚えてないの?」
「知らない、お前が何の求めているとか知らない」
「カリンちゃんを忘れるわけがない?」
「だからあんな、お転婆娘など俺は知らない!」
それを口に出した瞬間、ステンバーは口元に手を置く。それはスッと出た言葉でステンバー自身も驚く。なぜそんな言葉が出たのか。とリリネッドの方に目線を戻す。
そこには真っ直ぐこちらを見つめていた。
「やっぱ覚えていた」
ステンバーに向けられるその目は正義とも疑いの目でもない。ただの殺意に近いプレッシャー感じる視線だった。
歯を噛み締めながらステンバーは無数の角材を木の根の様に攻撃して行く。
リリネッドは息を吐いてから向かってくる物を次々と剣で弾き、斬り、防ぎながら一歩とまた一歩とステンバーの元へと歩き出す。
「なんだ? こっちたに来るなら俺から行ってやる」
ステンバーは右腕の関節部分から角材を生やしそれを螺旋状にしドリルのような形に変えてる。
「殴ると同時にお前を削る。安心しろ殺したりはしない」
リリネッドは影から大きな鳥を作り上に天井を剣でぶち壊しながら真上の飛んで行く。
「また逃げるのか?」
ステンバーは勇者の後を追う途中でビダルがサッと現れた。
「お前、こんなに暴れやがって」
「うるさい、今は忙しい。要件なら」
「お前が目的を忘れてないかの確認だ」
「勇者を捕らえるだろう?」
「いや、それはアラシュの命令だろう? クキチの命令だよ」
「ん?」
ステンバーは一度追うやめてビダルと向き合う。
「恩は返せ! 勇者を五体満足の状態で連れて行く事だよ」
「知るか」
「お前、その体がいつでも消せるんだぞ? 忘れたのか!」
「チッ! わかった…だがお前達の場所に連れて行ったあとはアラシュ様の方へと連れて行く。それでいいなあ」
「ああ」
再び、ステンバーはリリネッドを追う。
ビダルはヤンキー座りに姿勢になって棒付きキャンディーを口に入れる。
「まあ~、クキチの所に連れて言った瞬間、無事に勇者の体が帰って来れればけどな」
誰もいない。誰も聞いていない場所でボソッと言った。
●●●
最上階まで上がって来たリリネッドは鳥の影から降りて態勢を整える。
「かなり上がったよね。うわあ、高い」
近くの窓から高さを見るリリネッド。
17階ほどの高さまであるそこはいくつかある塔の最上階である。
「どうしよう? どうしたらいい? う~~~ん。だめだあー何にも思いつかない。でもやれるこ事はやらないと」
とリリネッドは何かの気配を感にて下を見る。ギシリと床が山の様に凸と膨らんだ後に床を突き抜けて右手の角材型のドリルを使ってステンバーが上がって来た。
「アイランさんは私を捕らえれば自由になれるの?」
「また、話か? 余裕だな」
「答えて」
「……。 自由とはなんだ? 人それぞれあるだろう。 俺はこの世界を守るそれが幹部となった俺の役割だ。そして外の世界の厄介を消すのも俺の役割だ。それだけだ」
「そう、本当にそれでいいの? カリンちゃんは」
「だから!! そんな女など知らない」
ステンバーは怒鳴る。と同時に薄ら記憶が脳裏に浮かんだ。
顔はぼやけ、声も掠れ、何もわからないぐらいなのに心がどよめく。
そしてステンバーの中に懐かしさと悲しさ、嬉しさが込み上げる。
「なんだこれは」
自分の気持ちに揺れ、足元がおぼつかず、胸や頭を抑えながらフラフラとなる。
すると下の階で暴れ壊しまくったことで柱が崩れステンバーが立つ床が崩れてしまいバランスを崩してしまい滑るように落ちる。
ステンバーは力を使おうとするも脳裏に移るわからない感情が邪魔をしてうまく使えず、ただ左手だけを伸ばして近くの捕まりやすい場所にぶら下がった。
「なんだ、コレハ? なんだ、この感情は?」
リリネッドが近づき手を伸ばす。崩れた床ギリギリまで体を入れて必死に腕を伸ばす。
そんなリリネッドを見てステンバーは右手のドリルで攻撃を考えた。が迷いが出た。
それをしたら悲しむと。
「(悲しむ? 誰が? 王が? クキチ? いや違うもっと暖かく、美しく、まるで…。)」
ステンバーはリリネッドを見る。
リリネッドの目を見る。
「(青い。青い……空)」
走馬灯に薄れた記憶が蘇る。
綺麗で綺麗な空と、美味しい空気と桜の花びらと……一人の少女。
目から溢れ出す謎の涙に戸惑うステンバー。
リリネッドが落ちそうなギリギリのところで手を伸ばす中、その近くにヴォワゴレレが出した悪夢騎士が2体が現れた。
「(ヤバい、まだ追って来ていたんだ!? 早く助けなきゃ)」
そう思いながら少しだけ体を前に出した瞬間、真逆様にリリネッドも落ちてしまった。
ぶつかりステンバーも落下していく。
「ここまでか…」
ステンバーは諦め目を瞑ろうとしたがリリネッドは必死に手を下に伸ばす。
分からない感情に解らない勇者の動き、判らない記憶。
「し、知りたい」
「ん?」
「教えてくれ、勇者」
溢れ出る涙を流しながら心の叫びを口にする。
「これはなんだ? あの綺麗な場所は? あの花の名は? か、カリンとは誰だ? 頼む。 この気持ちはなんだ!?」
リリネッドは腕を伸ばし続ける。
「それは私もまだ知らないけど。名前はあるよ」
「なんだ?」
「それは " 愛 " だよ」
そう言った瞬間、リリネッドのポケットからボロボロで崩れ欠けてつなぎ合わせたような状態の石が落ちる。
それはステンバーの体に吸い込まれるように中に入って行った。
体に入ったその石は一つの丸石と変わり体の中で輝きを出す。
「勇者・リリネッド」
「ん?」
すべての記憶を鮮明に思い出し、亡き彼女の為に自分の死の為に悪魔に喧嘩を売り、命を掛けて戦ったくれた、目の前の勇者の手を強く握りしめて抱き寄せる。
「思い出したよ、すべて」
「アイr」
リリネッドは口に出そうとしたがステンバーが止める。
と同時にエネルギーを角材に変えて足場を作って落下を止める。
「俺の名はアイラン。 カリンを愛する者だ!」
「思い出したの?」
「ああ」
アイランは膝を付き頭を下げる。
「うっええ!?」
「スマない!! これでは済ませられないほどの事をした」
「いいから」
「俺はダメな男だ!! 俺は! 俺は……」
リリネッドも膝を付きアイランの肩に手を置く。
「私も助けられなかった。それは同じだよ」
アイランはそれを聞いて少しだけ心強くなった。
「だがなぜ、俺のコアを持っていたんだ?」
「え? ああ~それが良く覚えてないんだよね。なぜだか握り締めていたの。 クロウに頼んで欠片を集めてもらって、魔法では治せないって言うから手作業で治したりして」
「へッ……。」
「ム?」
「とにかく、この恩はきっちり返す。今はこの世界を出る事だな」
「そうだね」
二人は立ち上がったその瞬間上から悪夢騎士は2体が下りてきた衝撃で角材が折れてそのまままた落下していく。
アイランはエネルギーで作り出した木の根を使って、リリネッドは落下中に見えた横の安全な部屋に投げる。
「アイランさん!!」
「大丈夫、後で落ち合おう。こいつらは俺に任せろ!!」
そう言いながら落ちて行った。
一人になってしまったリリネッドはどうしようかと考えていると騒ぎで掻き集まった魔物達が近づき集結していく。
「ヤバイ、ヤバイ」
リリネッドはとりあえず、走り出していく。
その途中でクロウの魔力を感じたのでそっちに向かう事にした。
大量の魔物を引き連れて。




