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第15話 帰還と報告

 ルーナ国に帰ってきてからミハル、マルナさん、グレンさん、タークさんの4人を城の執務室に集め、出ていってからの事のあらましを説明した。スペルビア王国での出来事、フリーダムの町、そしてダンジョンコアについてだ。

 話し終わった後、執務室の中は静寂で満たされた。


「で、アワリティア王国に行ってないのですか?」

「あっ……」


 しまった、ダンジョンで色々ありすぎて様子を見に行くのをすっかり忘れていた。


「それにしても、魔物が自然発生ではなく作られた奴だったとはな」

「坊主はそれをどうしようと考えてるんだ?」


 使い道か。


「ダンジョンコアをこのままの状態にしておくのは良くないとは思っている。でも……」


 ちらりとミハルとマルナさんの表情を窺う。

ミハルの方は腕を組んで目を閉じ何を考えているか読み取ることはできず、マルナさんは俺の発言をじっと待っており、その内面を窺い知ることはできない。

 魔物に親を殺されたミハル、夫を殺されたマルナさん。二人だけではない。この世界には魔物に親族、恋人を殺されたという人は大勢いるだろう。

 ルーナ国は人々が幸せに暮らせる国を目指している。それなのに、人々を不幸にしてきた魔物を生み出すという行為は正直後ろめたい思いもある。なにより、皆にそれ分かってもらえるかどうか……それが不安だ。


「はあ……。何ウジウジ悩んでいるんですか、らしくないですよ」

「そうね。それがソウサクくんの悪いところよね」

「ミハル? マルナさん?」


 俺が言い淀んでいると、ミハルとマルナさんが珍しく俺を叱責するような言葉を投げかけてきた。

 2人とも基本は俺に対して優しいし、怒るということはない。やっぱりダンジョンコアを使うということに対して思うところがあるのだろうか。


「ソウ兄、何か勘違いしていませんか?」

「え、もしかして怒っているんじゃないのか?」

「いえ、怒っていますよ」


 怒っているんじゃないか。

 やっぱりダンジョンコアを使用することを受け入れてもらえないのだろうか。


「怒っているのはソウ兄の身勝手な見解の押し付けに対してですよ」

「え?」

「どうせソウ兄のことだから、魔物に身内を殺された人たちに対して負い目を感じているのかもしれませんが、見当違いも甚だしいです」


 やばい、本気で怒るミハルが少し怖い。


「冒険者にしてみれば、魔物のおかげで生計をたてられていますし、魔物のせいで死んだとしてもその道を選んだ自分自身のせいです。それに、もしも魔物がいなければ大抵の人々は奴隷になるしか生活の道はなかったでしょうし、なにより人間というのは醜い生き物ですから外敵がいなくなったら今度は人間同士で争い、魔物に殺されるのではなく人間に殺されるようになるだけです。なにより、僕は人間を殺さなければならない世界よりも魔物を殺す世界を選びますね」

「ソウサクくんは魔物に対する敵対心のことしか考えていないようだけど、この世界の人々の大半は魔物よりも人間に対する恨みの方が多いと思うわよ? それに、魔物は食料にもなるし、便利な道具にもなるのですもの。要は使い方次第じゃないかしら。ソウサク君のことだから絶対に悪い使い方はしないでしょ?」


 人間よりも魔物を殺す世界か。確かにこのダンジョンさえあれば人間が生きている限り魔物という資源がなくなることはないため、資源を求めてわざわざ何もないような他国と戦争をするということは起こらないだろう。正に使い方次第だ。マリにも同じことを言われていたのに俺は駄目だな。

 ここまで、信頼されているんだ。このダンジョンコアをどのように使えばよりこの世界がよくなるのかをこれから考えていかないとな。


「ごめん2人とも、俺が間違っていたよ。でも、もう大丈夫だ。決心がついたよ、ありがとう」

「期待していますよソウ兄」

「ええ、頑張ってねソウサクくん」 



 結局、ダンジョンコアについては満場一致で使用することが決定した。

 グレンさんとタークさんもこれ以上魔物が手に負えなくなるのは避けたいようで、寧ろ魔物をコントロールできるのならば喜ばしいとのことらしい。

 とはいえ、まだこのダンジョンコアについて詳しく分かってはいないため、早めに色々と検証しなければならならない。


「後のスペルビア王国は数日でどうこうなるわけでもないですし、フリーダムの町の方も対空設備の問題が解決すれば問題ないですね。正直資金に関してはここまで集まるとは思っていませんでした」

「ふふ、俺にかかればこんなもの余裕さ」


 たまたま上手くいっただけだけどね。

 さっきは格好悪いところを見せたんだ。ここで少しは年長者らしく余裕を見せないとな。あれ、でも俺の方が実年齢は年下だから問題ないのか?


「ソウサクさん、対空設備の方は大丈夫そうか?」

「ええ、ゴーレムも大量に手に入れることが出来ましたし後で作って設置しておきましょう」


「坊主、受け入れに関してなんだが、あと半年もあれば食料の方も大丈夫だ。城内の畑は種も撒き終わって害虫対策も住んでいるから後は水を撒きつつ収穫を待つだけだ。ただ、魔物で国中の肉の消費を賄うのは労力が大きい。だから家畜を安全に育てられるように更に国を拡張した方がいいと思うぞ」

「え、もう終わったんですか? お疲れ様です、ありがとうございました。家畜の飼育は前々から必要だと思っていたので、後で新たな城壁を作りますね。育てられそうな家畜の選定はタークさん達ににお任せいたします」


 他の報告に対しては滞りなく進んでいった。

 また、俺がいない間の話も聞いたが、人手が少ない中で本当に皆頑張ってくれていたと思う。国を運営していくうえで人手の問題が一番大きい。人がいないと国は成り立たない。フリーダムの町の住人を出来るだけ早めに受け入れた方がいいだろう。でも、あそこの住人達はなんだか嫌な予感がするんだよな……いろんな意味で。


「さて、今日はここまでにしましょう。皆さんありがとうございました」


 会議は一旦ここでお開きだ。

 皆が執務室から出ていく。でも、本当はまだ話さなければならないことが残っている。先ほどの報告の中で一つだけ故意に隠していた部分がある。

 ちらりとマリに目線を向けると、ちょうどマリがこっちを向いたのと同時であり、2人でアイコンタクトを取って頷き合う。お互いに覚悟は決まっている。


「マル——」

「ねえ、マリにソウサクくん。私に何か話があるんじゃないの?」 

  

 声を掛けようとしたその時、部屋から出ようとしたマルナさんが振り返り、どこか寂しそうな微笑みを浮かべていた。

 

いつもお読みいただきありがとうございます。

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