第14話 イチャイチャ
「おにいちゃん、何かするの?」
「頑張っているこの町の人たちのために、少しご何かしてあげようと思ってね」
後は、今日自分たちが泊まる場所の確保だ。
なんせこの町に宿屋はないからね。
さて、広さは100×100メートルといったところかな。
まずは木で建物の概観を思い浮かべる。そして中を半分に区切り、それぞれ脱衣所、そして大きな浴槽を2種類用意する。貯水タンク、そこから伸びるホースとシャワーノズルを設置。後は1本の剣と2つの結晶がすっぱり収まる場所を作り上げれば完成だ。
もちろん富士山の絵は忘れていない。
後は桶や椅子といった小物をつくり、汚水は町の外の堀の中へ行くようにするだけだ。
「わー、なんかすごいのできたけど、これは何なの?」
「ふっふっふ、これは大浴場といって、皆で温かいお湯につかる場所だよ」
「へー、大きい『おふろ』ってことだね」
「その通り。早速使ってみようか」
その前にお湯を用意しないとね。
水の結晶を使い、貯水タンクに水を溜めていく。次にデアグニス・グラディウスをつけて、水を温める。この世界の人はお湯で流すというのに慣れていないだろうから、39度くらいでいいかな。
次に浴槽に同じようにお湯を溜めていく。最後に男子と女子を隔てた壁の間に、デアグニス・グラディウス、水の結晶、雷の結晶を設置して、その上に使用方法と注意書きをしておこう。
『この剣に魔力を流すとお湯を熱してくれます。火傷にだけ注意してください』
『この結晶に魔力を流すと水が出ます。飲み水ではないので注意してください』
『この結晶に魔力を流すと電気というものが発生し、お湯がピリピリします。やりすぎには十分注意してください』
おっと、そういえば暖簾の準備もしておかないとな。
「ほわー、体がピリピリするけど気持ちいい」
「これは肩こりや腰痛に良いんだよ」
「もう、おじいちゃんじゃないんだから」
マリと二人っきりの入浴。ありがとうございます。
もちろん、お互いに水着を着用している。最初、マリが裸で入ろうとしたため速攻で止めた。流石に裸の付き合いは不味い。ダリンさんに殺される。
マリは青色のワンピースタイプの水着だ。サラサラの赤毛が栄えており、よく似合っている。眼福眼福。できることならば、後10年後の水着姿もみてみたいものだ。
「おにいちゃん」
「ん?」
「えいっ!」
マリの手から放たれたお湯が顔面に直撃する。むむ、やったな?
お返しだ。ダブル水鉄砲!
「きゃぁー」
「俺に勝とうなんて10年早いぞ」
「むー、マリだって日々進化してるんだから。えい、えい!」
「ぐはー」
こんなに楽しいお風呂は久々だ。やっぱり家族ではいる風呂はいいものだな。今度はマルナさんも誘って――ぶはっ。
「おにいちゃん、今変なこと考えてなかった?」
「滅相もございません」
ごめんなさい。
マリとお風呂を堪能した後は、町長に使用上の注意を説明し、住民たちに大浴場を開放する。
その繁盛振りを隣の簡易マイホームで眺めつつ、マリとまったりブレイクタイムだ。
「皆喜んでくれてよかったね」
「あ、ああ」
マリが外の様子を眺めながら自分のことの様に喜んでいる。
「ふふ、幸せだなあ。この幸せがずっと続けば良いのにな」
「そ、そうだな」
天使の代名詞、赤ちゃんも裸足で逃げ出すような可憐な笑みを浮かべ、俺の胸元に頭をこすり付けてくる。
「……」
「ん? おにいちゃん、どうしたの?」
どうしたもこうしたも。
現在、時刻は20時位であろうか。日は沈み、僅かな火の明かり便りの薄暗い室内。俺はソファに足を開けて座っている。その間にすっぽりマリが収まり、背を俺の体に預けている。
「おにいちゃん、聞いてる?」
俺特性の浴衣に身を包み、その薄い生地越しにマリの体温、心音がダイレクトに伝わってくる。密着した状態から仄かに香るさわやかな香り、風呂上りに飲んだハチミツミルクのせいか、そのピンクの唇は光を放ち妖艶を帯びている。少し眠たいのかトロンとした目。
……え、本当に9歳?
「むむ……はむぅ」
「――くぇrty!?」
「話を聞いてくれないおにいちゃんなんか、食べちゃうもん。はむ、はむぅはむはむ」
腕、耳たぶ、首筋に次々唇を這わせ、甘噛みをされる。ヤバイ、これはいろいろな意味でヤバイ。
「ま、マリ、降参、降参だ。ちゃんと話を聞くから許してくれ」
「本当にー?」
疑いの眼差しを向けつつも何とか止めてくれた。いつもなら妹とイチャイチャできて役得というところだが、正直それどころじゃない。というか、他の男の子に同じ真似をしていないよね? それはおにいちゃん許しませんよ?
「……なあマリ、さっきの攻撃をどこで覚えたんだ?」
「えっとね、おかーさんが、おにいちゃんと二人きりになった時、ボーっとしているようだったら使いなさいって」
犯人はマルナさんかよ! 娘に何ていうことを吹き込んでいるんだ。お宅の娘さん将来は小悪魔になっちゃうよ。
「おかーさんも、昔おとーさんに同じことを良くしてたって。特に薄暗い夜は効果は抜群よって。その後ちゃんと責任を取ってもらったわって。よく意味が分からなかったけど」
マルナさん、恐ろしい娘!
いやいやいや、子どもに話す内容じゃないよ?
というか、マルナさんが小悪魔だったのか。くそう、ダリンさん羨まし――じゃなかった。
「マリ、それは当分禁止だ」
「えー」
「……新しい料理が食べたくないか?」
「――!? はーい」
よし、何とか禁止することができた。
子どもは親の言ったことを、意味も分からずに実行するから怖いよな。マリなんかマルナさんの言うことを全面的に信頼しているからこそ、今回も言われたとおりにやっちゃっただけだろう。
マリが不適な笑みを浮かべているような気がするが気のせいだ。うん、気のせい気のせい。意味が分かた上での行動であるはずがないよね。
翌朝、ロウジさんから話がまとまったという報告を受けたため、自宅まで赴く。
それにしても、話がまとまるのが早すぎる。まだ一晩しか経っていない。やっぱり圧倒的に反対者が多かったのかもしれない。やっぱり、今の安定した生活を手放すのは難しいだろう。
「それで、話し合った結果はどうでしたか?」
分かりきっていても、結果をしっかり受け止めないとな。
「明日にでも出発可能だそうです」
「そうですか、やっぱり無理でした――え?」
「え?」
ん? おかしいな。確か移住するかしないかの話をしていたはずだけど。
「ソウサク様の国に移住するのは当然ではありませんか。我らが天使の導きを断ることがありましょうか。お時間を頂いたのは、出発までの準備にどれ必要かを考えるためです。皆、1日もあれば準備を終えることができると言っておりました」
……なんでやねん。
お読みいただきありがとうございます。
皆さんお待ちかねのイチャイチャ回です。といっても、子供なので過激なのはありませんが。
本日の投稿はこれにて終了となります。また明日も宜しくお願い致します。




