第1話 到着と冒険者カード
眼前に黒くそびえ立つ壁がついに姿を現した。
「これがソウ兄の言っていた国ですか」
「王都でもこんなの見たことねえな」
城壁を見上げながら驚きの声をあげる。ファンタ1号を見た時よりも驚きの度合いは大きい。うんうん、もっと驚いてくれてもいいんだよ?
「てっきり王都で作ったような国だと予想していたんだけど」
「思っていたよりも、その……はあ。すごいという言葉しか出てこないですわ」
それはそうだ、これを作るのに数か月は要したからね。王都の時は時間がなかったため急いで作ったものだ。こことは比べ物にならないだろう。
「それではようこそ、ここが今日から僕達の居場所です」
「うわーすごくきれい」
マリが歓喜の声をあげる。整地された道、鑑賞用に道に等間隔で植えられた木々、規則正しく並ぶ家々。この世界の人からしたらこの国は一種の芸術だろう。
ここまで喜んでくれるなら、頑張って創った甲斐があったってものだ。
「すごいですけど、今の僕達には広すぎますよね」
「まあ、それはおいおい……」
ミハルに痛いところを突かれた。数万人を超える人口が住めるように作られたこの国は、今の俺達には確かに広すぎる。あの元奴隷の人たちにこっちに移住してもらおうかな。
「まあ、これだけ綺麗な国ならば簡単に人は集まると思いますよ。信じてくれれば、ですけどね」
それは今後の課題としていきたいところだ。それに、人を集める前に人が集まっても運営していけるような仕組みを整える必要がある。腐った政治思想のない国を創ることが俺の夢だ。
「皆さん、色々見て回りたかったりするかもしれないですが、先に1箇所ついてきてもらっていいでしょうか?」
特に今にも降車して駆け出しそうな年少組に視線を向ける。
というか、君達普通に迷子になるよ?知らない土地だし、なにより助けてくれる人がいないんだから。せめて皆の住むところが決まるまで我慢してくれ。
ゆっくりと人のいない大通りを進み数十分、中央の区画にあるお目当ての場所にたどり着いた。
「これまた大きいっすね」
「冒険者ギルド、ですか。王都とは大違いですね」
周りの建物より一際大きい4階建てだ。血気盛んな冒険者が100人来たとしても余りあるスペースがある。多分こちらの世界でこれより大きい冒険者ギルドを建てている所はないだろう。
ここに来た目的はただひとつ、皆に冒険者カードの発行、つまり自分の能力を知ってもらうためだ。ここで重要なのが特にスキルだ。
こちらの世界ではスキルという概念がない。つまり、自分にどんな能力があるのか、戦い方が向いているのかということが分からないのだ。これは自分を鍛える上で損をしているといってもいいだろう。
そして、その能力を調べるための魔法具はこの冒険者ギルドにしかない。材料がなさ過ぎて創るのに苦労したのはいい思い出だ。
「それでは順番に測っていきましょう」
【名前】グレン
【職業】剣士
【HP】250
【MP】190
【スキル】
「剣技lv7」
剣を使用時:攻撃速度+7%
「指揮lv1」
視野・判断能力・冷静さが向上する
【魔法】
初級魔法
【名前】トリゾウ
【職業】双剣士
【HP】200
【MP】230
【スキル】
「双剣技lv5」
双剣を使用時:攻撃速度+10%
「剣技lv3」
剣を使用時:攻撃速度+3%
【魔法】
初級魔法
「えーと、剣技と指揮ですか」
「このスキルってなんすか?」
「そうですね、その人の潜在的な能力とでも思っていてください」
「だからソウサクさん俺に双剣をくれたんすね!」
【名前】チョコ
【職業】魔術師
【HP】150
【MP】400
【スキル】
「魔力操作lv5」
MP使用時:消費MP90%
「魔威力増大lv4」
魔法使用時:威力+4%
「雷術lv1」
雷属性の魔法使用時:威力+3%
※雷魔法習得速度上昇(微)
【魔法】
初級魔法
中級魔法
・火:ファイヤービックボール
・雷:サンダーボルト
【名前】ミント
【職業】魔術師
【HP】160
【MP】390
【スキル】
「魔力操作lv5」
MP使用時:消費MP90%
「魔威力増大lv4」
魔法使用時:威力+4%
【魔法】
初級魔法
中級魔法
・風:ウィンドストーム
・土:アーストリプルアロー
「わ、なんか雷術ってスキルがある。なるほど、私は雷魔法を頑張ればいいってことね」
「うう、チョコったら羨ましいですわ。私にはそんなものありませんのに」
チョコさんに雷術が身についたのは雷狼との戦闘を経たからであろうか?スキルの出現条件は良く分からないんだよな。そのうち出現条件など本でまとめてみるか。
【名前】ターク
【職業】夢追人
【HP】500
【MP】300
【スキル】
「魔魂狩」
鎌使用時:攻撃速度・与ダメージ+50%
「威圧lv2」
鎌使用時:相手の素早さ―20%
【魔法】
初級魔法
「なるほど。ところで坊主、これって普通の人と比べてどんなもんなんだ?」
「人間ではありえないほど強いです」
びっくりしたよ。HPもMPもすごく高くなっているし、タークさん強くなりすぎでしょ。なによりスキルが酷い。完全に俺があげた武器のせいだよな……。
【名前】ミハル
【仕事】道具使い
【HP】30
【MP】60
【スキル】
「賢者lv3」
記憶力・判断力・思考力向上(小)
【魔法】
初級魔法
「皆さんと比べたら全然ですね」
いやいや、同年代からしたらHPもMPも十分高いぞ? 多分2年間皆のために害獣を狩りまくっていた成果だろう。それにスキルもなんだかカッコいいし。
【名前】バン
【仕事】卵
【HP】15
【MP】10
【スキル】
無
【魔法】
初級魔法
【名前】ミミ
【職業】卵
【HP】10
【MP】15
【スキル】
「魔力操作lv1」
MP使用時:消費MP99%
【魔法】
初級魔法
「やった、これが俺の冒険者カードだ!」
「うー、私のHPってこんなに低かったんだ」
「心配しなくても皆がついてるよ。それに、俺がもっと強くなってミミくらい守ってやるよ」
「そうだよね、ミハル兄もソウ兄もいるし大丈夫だよね」
「……」
見事に華麗なスルーだな。もうこれスルースキルあってもいいんじゃないか?さっきからバンの視線が突き刺さるんだけど、俺悪くないじゃん。
ミミはスキルを見る限り魔法適正があるのかな?
それにしても、職業が卵ってどういうことだろうか?まだ、これから行動で変化するということだろうか? なにはともあれ、この子たちの今後の成長を温かく見守ることにしよう。
お読みいただきありがとうございます。
GWの暇潰しになっていましたら幸いです。




