第10話 最強の白衣
俺の言葉に驚き、数秒の間グレンさんたちは思考がフリーズしその場で停止した。……あ、再起動した。
「そ、装備を譲ってくれるだって!? 本当に良いのか?」
「ええ、といってもグレンさんと、トリゾウさん、チョコさん、ミントさんの4人分だけですが」
「私達の分までいいの?」
「ええ、何もないよりはましでしょう」
「ありがとう、助かりますわ。このローブは普段着もかねてますから、どうしようかと思ってましたの」
「よかった。これで明日からも何とか生きていけそうっす」
さて、例のものは必ず作るとして、他をどうするか。ううむ、よし決めた。一応渡す前に断りを入れておこう。突き返されても悲しいからね。
「ただし、僕の取り扱っている装備は少し変わっているのでそれでもよければですけど」
「木の枝より強ければ変でも何でもいいさ」
「それでは少し待っていてください」
装備をあげるといっても、マルナさんたちみたいにカードの能力まで見せるつもりはない。人力車の中から持ってきたように装わなくてはいけない。リスクはできるだけ下げないといけないからね。
人力車に戻るとカードを一面に並べていく。さて、例のものは後に作るとして、武器から作ろう。
まずは両手剣だ。用意するものは『ライトニングホーンラビット』。その名の通り、大きな角から電撃をビリビリ出す2メートルほどの巨体を持つ魔物だ。実際に角から雷撃が繰り出される前に、先行放電が発生していたため、電撃が来るタイミングや場所が分かり、討伐は思っていたよりも容易だった。
「ミックス」
【名称】 ライトニングホーンソード
【クラス】装備
【詳細】
切れ味は良く、鉄ならたやすく切る事が可能。
魔力を通すことで、電撃を剣にまとわせることが可能。
うん、なかなかいい感じではないだろうか?スチールソードを使用していたグレンさんには丁度良い武器だろう。
お次は双剣だ。こちらは少しギミックを凝らそう。使用する魔物は『ポイズンサーベルタイガー』だ。毒蛇なんか比べ物にならない大きさの毒牙をもつ魔物だ。こいつは普通に怖かった。その牙が触れたものは、大岩だろうと青黒く染まり、溶解してしまっていた。近づくようなことはせず、遠距離から中級魔法を湯水のように使い討伐したのは、今になってはいい思い出だ。
【名称】 ポイズンシザース
【クラス】装備
【詳細】
大バサミの形をしているが、双剣に変形可能。
魔力で刺激を与えると、刃先から猛毒を分泌する。
ほう、やばそうなものが出来てしまった。これで魔物を攻撃するとお肉を食べることは出来なさそうだ……え、これ危なくない? ま、まぁいいか。
気を取り直して次は杖だな。女の子が使うなら可愛さも必要だな。使用するメイン素材は『魔鋼』『ファイア・ストーン』『ウィンド・ストーン』の3つだ。
【名称】 ファイア・マナリング
【クラス】装備
【詳細】
指輪型の魔法補助装備。火属性以外は1.3倍、火属性魔法の威力が2倍になる。また、火属性に関しては消費MPが1/2される。
可愛い猫の装飾が施されている。
【名称】 ウィンド・マナリング
【クラス】装備
【詳細】
指輪型の魔法補助装備。風属性以外は1.3倍、風属性魔法の威力が2倍になる。また、風属性に関しては消費MPが1/2される。
可愛い犬の装飾が施されている。
うん、これなら可愛いし、手の邪魔にならないだろう。気に入ってくれるといいけどね。
最後は例のものを作成する。使用する魔物は『ハードスレッドインセクト』だ。
【名称】 白衣
【クラス】装備
【詳細】
鋼よりも強固な糸で作られた白衣。鉄よりも硬く、鉄壁の防御力を誇る。
ポケットつきであり、色々なものが入れられて便利である。
さすが白衣。防御力の桁が違う。他の部位の装備も作ろうかと思ったけど、これだけで十分だな。さあ、布教活動のはじまりだ!
「リリース!」
「グレンさん持ってきましたよ。まずは皆さんこれを着てください」
「これは……ローブか?」
「あら、いいじゃない」
「本当ね。着心地が素晴らしいわ」
「俺とグレンさんが使うよりはチョコとミントに譲った方が良いかもしれないっすね」
チョコとミントさんは素直に喜んでいるが、前衛の二人はあまり興味なそうだ。そりゃあ前衛は敵の攻撃を受けやすい。魔法使いが着ているようなローブに興味持たないのもしかたない。しかし、この白衣は普通のローブとは違う。防御力は折り紙つきだ。
「ふふふ、そう思うでしょう? しかし、これは普通のローブとは違います。なぜなら白衣だからです。そうですね、この白衣の右を私が持つので、左をトリゾウさん持ってもらっていいですか?」
「あ、ああ、いいっすよ」
あれ?ちょっと引かれて――――いや、気のせいだな、うん。
「それでは、グレンさんそこらへんの剣でこの白衣を斬ってみてください」
「斬るって……いや、何も言わない約束だったな。分かった」
グレンさんは団員から剣を受け取ると、白衣を一刀両断するべく剣を振り下ろす。甲高い金属音とともに鉄の破片が舞い上がる。白衣ではなく剣が根元から真っ二つに折られたのだ。
「……」
「防御力のすごさ分かってもらえましたか?」
「……コクッ」
気分はまさに実演販売である。今の結果をみて、防御力の心配をする人はもういないだろう。4人とも満足そうな顔で白衣を身にまとっている。まるで実演販売をみて購入した消費者のようだ。
こうして白衣愛好家を増やす旅は順調な滑り出しを見せたのである、まる。って、旅の目的違ったよ……。
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