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虐げられれた底辺令嬢は逆転する~公爵家も帝国も私がいただきますわ~  作者: 秦江湖


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第40話 迅雷の一撃

オルデンベルク渓谷の底部。


二万八千の反乱軍連合は、鉱山都市を目指して蛇のように長く伸びきった縦隊で行軍していた。


その中ほど、輜重車と馬車が雪に車輪を取られて立ち往生している一角があった。

山岳盗賊団の頭目ガルバが率いる、約四千の部隊である。


「おい、押せ! 積荷を捨ててでも進まねえと、前の連中に置いていかれるぞ!」


怒号と鞭の音が響く。

前方の鉱山労働者部隊は先を急ぎ、後方の脱走兵部隊は足止めを食らって立ち往生していた。前後との連絡は途絶え、横腹を剥き出しにした無防備な空白地帯が生まれている。


その瞬間、渓谷の急斜面を覆っていた吹雪の奥から、鋭い角笛の音が鳴り響いた。


「敵襲だ! 崖の上を見ろ!」


見張りの叫び声が上がると同時に、雪煙を切り裂いて白銀の騎影が駆け下りてきた。

先頭を駆るのはクラウディアだった。

佩刀を抜き放ち、氷のような眼光で混乱する敵列を見据えている。


「全軍突撃! 隊列の中央を食い破れ!」


クラウディアの号令とともに、三千の精鋭が一気になだれ込んだ。


ジークリット率いる前衛の魔導歩兵部隊が、軽量化された魔導銃を一斉に斉射する。青白い閃光がガルバ隊の先頭集団を薙ぎ払い、荷馬車が次々と火を噴いた。


「な、なんだこの速さは!? 防げ、槍を並べろ!」


ガルバが叫ぶが、雪道で立ち往生していた賊たちに陣形を組む余裕などなかった。

そこへ、クラウディアの率いる騎兵が一撃で突入する。


防具すら身につけていない賊たちが紙屑のように吹き飛ばされ、指揮系統は一瞬で崩壊した。

局所的に作り出された三千対四千の戦況は、練度と装備の圧倒的な差により、わずか一刻足らずで一方的な蹂躙へと変わる。


「引け! 後ろの部隊へ合流するんだ!」


ガルバ隊の残党が算を乱して後方へ逃げ出そうとした。

だが、その逃走は後続の部隊を巻き込み、味方同士で踏み潰し合う連鎖パニックを引き起こした。


「敵の後続部隊、左右から包囲の動きを見せています!」


ジークリットが返り血を拭いながら叫ぶ。


数に物を言わせた反乱軍の別隊が、ようやく事態を把握し、クラウディアの小軍を包囲しようと雪を蹴立てて接近してきていた。


常の将であれば、壊走する敵を追撃して戦果を広げようとするところだった。

だが、クラウディアは冷徹に刃を払った。


「追撃は不要!全軍、北の尾根へ即座に離脱する!」


「はっ!」


クラウディア軍は深追いを一切せず、包囲網が完成する直前、風が吹き抜けるような速さで雪山の死角へと姿を消した。


後に残されたのは、四千の部隊が壊滅し、恐怖で統制を失った反乱軍の大混乱だけだった。

大軍の弱点を正確に突いた、最初の一撃だった。




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