第7話 ファナ、ドラゴンを倒す
「エリク!」
「っ痛えぇ……」
爆発の衝撃で転がり出てきたエリクを見つけ出すと、私はエリクの無事を確認するためそちらに向かって慌てて駆け出した。
ドラゴンの体内で魔術を爆発させたとは言え、肉片は飛ぶからね……。
あと運が悪ければ骨片も飛んでくるから、それが刺さると大怪我の元になる。
それを防ぐために、爆発直前にエリクの周囲に結界をはったわけだけど、無事を確認するまでは安心できないわよね……!
「エリク! 大丈夫?」
「多分……」
そう言って座り込み頭を振るエリクに、私はどこか怪我をしていないか腕を持ち上げたりジロジロ身体中を確認してみたが、とりあえず大事に至るような怪我はなさそうだった。
「……大したもんね。ドラゴンとあんな至近距離で戦ってほぼ無傷なんて」
「それはこっちのセリフだ。なんなんだよお前のあの意味わからん魔術は!」
詠唱魔術と並行して無詠唱魔術二重でしかも打ちまくりとか意味わからんだろ!
「そう言われても……」
意味わからんと言われても、できるもんはできるし。
と言っても、私以外にできる人なんてそういないだろうけど。
「ファナ……、本当に何者なんだ……? まさか魔族とか言わないよな」
「なわけないでしょ。どう見たってただの人間でしょうに」
確かに。魔族の中には人間に擬態するのがうまいやつもいるけど。
でも魔族は基本詠唱魔術を使わないからなぁ。
わたしたち人間より根本魔力の源に近い魔族は、呪文を媒介せずに魔力を操る。
手足を動かすのと同じ感覚で、随意で魔力を具現化させることができるのだそうだ。
それはもう、術という手段を経由しない時点で、魔術とは言わないのだけど。
そこまで説明すべきかと思っていたけど、どうやらエリクは私の言葉を素直に信じてくれたようで、「世の中、いろんな人間がいるんだな……」の一言で片付けていた。
いやあ……、この人ホント、大物よね。
「あっ、ねえ。ドラゴンオーブ欲しいドラゴンオーブ!」
とりあえず、彼の中でわたし何者問題が解決したらしいエリクの袖をくいくいとひっぱりながらそう言う。
「ドラゴンオーブ?」
「知らないの? ドラゴンの核よ! そのまま売っても高く売れるし、魔道具とかの素材としてもめちゃくちゃ価値があるんだから!」
せっかくドラゴンを倒したんだから、持って帰りたい!
「つまりは、お宝、ってことか……。どこにあるんだ?」
「え? 核って言うからには体内にあるんじゃないの?」
「…………どこ…………?」
私の言葉に、エリクがダンジョン内に横たわるドラゴンの巨体を見あげる。
「これを俺に……、あてもなく捌けと?」
「…………」
そういえば私……、核の場所って知らんな……。
過去、ひとりでドラゴンと対峙したときは、大抵跡形もなく吹っ飛ばしていたし(その時はドラゴンオーブの存在を知らなかった)。
ドラゴンの核がドラゴンオーブなのだと知った後、採取目的で討伐した時は、同行してくれた研究者が掘り出してくれたし。
うーん……。
「諦めるか……」
「いや待て、諦めるの早すぎるだろ」
「だって、こんなの解体してたら日が暮れちゃう」
しかも血生臭いし。
その血生臭いことをちゃっかりエリクにやってもらおうとか不届きなことを考えていた私だが。
そんな話をエリクとやいのやいのしている時だった。
私たちの隣で横たわっていたドラゴンが、淡く光を放ち出したのは。
「あれ……」
ドラゴンの全身を包むように、キラキラとした光が身体中を纏ったかと思うと、ぱぁ……、とその光が霧散し、それと同時にドラゴンの体も消失した。
「おい、消えたぞ……」
「あっ、ちょっと見てあれ」
ドラゴンの体が横たわっていたちょうど中心と言える部分。
そこに、きらりと光る何かが転がっているのが見えた。
ドラゴンと共に、水たまりのようになっていたドラゴンの血も消えていたので、探すまでもなくすぐに拾えた。
「…………指輪?」
「だなあ」
拾い上げてみるとそれは、ゴールドのリングに青い石の嵌め込まれた指輪だった。
ん〜〜〜〜。
すぽっ。
「あっ、ファナお前、そんな警戒心なく……」
「だって、はめたら何かわかるかもしれないじゃない」
少なくとも、呪いの類がかけられている感じなかったし。
そう言って、無造作に指輪をはめた私に注意してきたエリクに反論をしようとした瞬間――。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……、と激しい音を立てて。
【志学】のダンジョンが、揺れ始めたのだった。




