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第46話 ファナ、そしてこれから





 ――あれから。

 突然の爵位持ち魔族の襲撃によって、当然のことながら冒険者コン決起会パーティーは中断を余儀なくされ。




 ☆ ☆ ☆




「え、おい。お前いつの間にそんなに怪我してたんだよ……」


 そう言ってドン引きしながら私に告げてきたのはエリクだ。

 あの、ヴァラーとの戦いのすぐ後。

 助けに来てくれたギルド職員や王宮魔術師たちに保護されて治癒してもらった結果、結構な怪我人の姿で自室のベッドに寝かされている私なのだったが。


「……あなたの防御結界を優先してたから、自分に回ってきた分を避けきれなかったの」

「はあ?」


 バツが悪くてごにょごにょと言う私に、エリクがすっとんきょうな声を上げる。


 いやね!

 わかってるわよ私だって!

 実際エリクはほぼ無傷なわけだし!

 でも近接戦は致命傷を喰らいやすいし、一瞬が命取りになるからってめっちゃ集中してフォローに回ってたんだってば!

 結果として優秀すぎる相方エリクが避けるのうますぎて不要だったんだけど!

 でもってそっちに集中してた結果、致命傷じゃなければ多少のダメージはいいかって無視してた結果のコレなんだけど!


「……お前なあ」


 私がむくれているのをどう捉えたのかはわからないが、エリクが呆れた様子でため息をついた。

 やめてよ!

 なんか私がどんくさい人みたいじゃん!


「まあ、この話は一旦置いといて。あの人形の話を確認してきたぞ」

「……どうだったの?」


 エリクの言葉に私も身を乗り出す。

 あの時、私がヴァラーに剣を突き刺した瞬間、現れたのは本当にあの魔王の人形だったのか。


「使用人の話を聞くと、確かに該当の時刻にあの人形は目を覚まして起き上がったらしい。ベッドから体を起こしたまま中空を見つめていたかと思うと、突然フッと消えたと」

「じゃあやっぱり……」

「ああ。あの時あの場に現れたのは、間違いなくあの人形だと思って間違いないだろ」


 それから、しばらく消えていたかと思うとまた気絶した状態でベッドに横たわっていたらしい。


「……もしかしたら、あの人形自体が『魔王の遺産』ってことなのかしら」

「かもな。それにしては、一向に起きないのは気にはなるが」


 おそらく、答えを握っているのはあの人形なのだろうけれど。

 なにをきっかけにこの間みたいに目を覚ますのか、本腰を入れて調べる必要があるのかもなと思ったところで。


「……ところでお前。あの魔王とはどういう関係だったんだ?」

「どういう、って?」


 きょとんと尋ねた私の問いに、今度は逆にエリクがなんだかバツの悪そうな表情になった。


「……言ってただろ。あの、ダンジョンで。あれが」


 ――ああ。

 そこでようやく、エリクが尋ねたかったことの意図を掴めた。


 あの時、『愛してる』と私に言ってきた、人形の言葉。

 いわゆる、()()()()()()()()()()()()()、ということを聞きたいのだろう。


「……友人よ。私の知る限りはね」

「知る限りは、って」


 エリクがなにか言いたげな顔で私に向かってそう言ってくるが。

 ……だって、仕方ないじゃない。

 ……私だって、よくわからないのに。


 そう思う私の気持ちを汲み取ってくれたのかどうかはわからないが、エリクが「……はあ」と肩を落としてから、ぐしゃっと私の頭に手を乗せて髪を乱す。


 抗議の気持ちも込めて頭に置かれたエリクの手を跳ね除けると、薄く笑ったエリクの瞳と視線がぶつかった。


「なに……」


 なんだか、何か言いたげな目線に顔をしかめて答えると、


「……まあいい。とりあえず次の客も来たみたいだしな」


 とエリクが空気を切り替えて私の頭に乗せていた手を上げた。





「ファナ様。バーケンレーグ家のコーネリアス様がお見舞いにいらしてますが……」

「追い返していいわよ」


 エリクと入れ違いに入ってきた使用人頭のジェームズがそう告げてくるのを、すっぱりと返す。


「はあ……、かしこまりました」


 と言って退室していくジェームズを見送り、ため息をつく。

 なにがなんだかよくはわからないのだが。

 あの日、ヴァラーとやりあったあの冒険者コンの会場にいたコーネリアスは、なぜだかヴァラーとやりあってる私を見てなんかかっこいいと思ったらしい。


 ファンレターなのかラブレターなのかわからない暑苦しい手紙を送りつけてきては、時々今日みたいに王宮まで顔を出しにくるようになった。


 ……いや、本当になんなんだろうね!?


 ちなみに私の実家であるクレイドル家は、領地の一部を没収されることとなるらしい。

 実子を亡き者として戸籍から抹消したことが第二王子の目に明らかになったことで、今後こういったことを起こす貴族がないように見せしめというわけでは無いけれど粛清するのだそうだ。


 みんな大変だね……。




「おい人間……、これはどういうことだ……」


 そう言って、私がぼーっと考え事をしているところに入ってきたのはヴァラーだった。

 私に隷属の術を使われて、舎弟その2になった魔族。

 ちなみに舎弟その1はリーゼントである。


「どういうこと、って?」

「なんで俺がこんな格好をさせられている……!?」


 納得いかないといった様子でヴァラーがわなわなとそう叫ぶが、別にそんな嫌がらせみたいな格好をさせてるわけじゃないわよ?

 ヴァラーには擬態の術をかけて、以前の魔族の面影を少しだけ残す風貌に変えてあるのだ。


 だってねえ、考えてもみて?

 街を襲った高位魔族がうろついてたらみんなびっくりするでしょうよ!


 だからあの時『私とエリクで魔族を討伐した』ということにして、ヴァラーを隷属させたことは公にはしないことにしたのだ。


 ……はあ。

 魔族の主かあ……。


 なんか本当に、私が魔王になったみたいじゃない?

 縁起でもないわあ、と思いながら、私は目の前で憮然とした表情でこちらを睨むヴァラーに言った。


「あのね。あなたをもとのまんまの姿でそのへんうろつかせてたら、色々面倒なことになるのよ。そんなこともわからないの?」

「はぁっ……!?」


 そんなこともわからないのか、という私の言葉に、ヴァラーが気色ばんで前のめりになる。


「それに私はあなたにやってもらいたいことがあるから、その姿にさせたの」

「やってもらいたいこと、だと……?」


 隷属の術の効果のせいなのか、不服なことには不満を申したててはくるが、ヴァラーは意外にも私の言葉に素直に耳を傾ける


「私があなたに伝える最初の命令よ。ヴァラー。あなた、次の冒険者コンに参加しなさい!」

「……………………はあ?」


 びしりと指を指して告げる私に、ヴァラーが『何言ってんだこいつ?』と言わんばかりにがくりと肩を落とす。


 まさか、自分が敵対した魔族を隷属させることになるとは全く予想だにしていなかったが、この状況は一石二鳥。

 神にーちゃんと約束した『冒険者コン』に魔族を参加させるにはうってつけの相手ができたわけで――。






 この先、第二、第三の爵位持ち魔族が私の元にやってきては、そいつらを隷属させつつ冒険者コンに参加させるという無茶を繰り広げていくこととなるのだが、それはまた、これから少し先の話である。


 私の『冒険者コンに魔族を参加させよう大作戦!』はまだ、はじまったばかりだ。




ここまでお読みくださり、ありがとうございます!


単純にキャラクターに呪文詠唱させたかったから始めたこのお話、

一度20話くらいまで書いたものを、「なんか違うな……」と思って

途中のまま置いていたのですが、今回完結まで書き切ることができました!

 

少しでもお楽しみいただけたなら嬉しいです。

最後に改めまして、今作をお読みくださり、ありがとうございます。


皆様の日常を少しでも彩ることができましたら嬉しいです。

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